NTTドコモは2月24日、「『クルマ』の新たな価値を創造する。」をテーマにしたイベント「ドコモ自動車ビジネスソリューションサミット」を開催した。
基調講演「ドコモのITSテレマティック戦略について」では、ドコモ代表取締役社長の加藤薫氏と、同副社長の吉澤和弘氏が登壇。また、ゲストとしてテスラモータージャパン代表執行役員社長の樺山資正氏、日産自動車の車両IT&自動運転事業本部長である山本浩二氏が登壇した。
イベント名が表すように、ドコモと自動車ビジネスは昨今密接な関係にある。同社の立場でいえば、所有する通信プラットフォームをどのような形で提供するか、自動車ビジネス側では安定した通信の獲得、そしてユーザビリティの変化をどう取り込んでいくかが、今後のビジネスにおいて無視できない大きなポイントになるのだろう。イベントでは、すでに始まっているサービスや試み、これからの将来像などが語られた。
ドコモの加藤氏は冒頭、1979年12月3日に当時の日本電信電話公社(NTT)でサービスを開始した「自動車電話」から、同社の自動車向けの取り組みは始まったと振り返った。
続けて、「自動車電話の進化・進歩と同じように自動車も発展している」(加藤氏)と、携帯電話を片手に日産自動車のリーフ、テスラモーターズのMODEL Sを紹介。電気自動車である両モデルを実例にすでに通信のプラットフォームを提供していると実績をアピールした。また、自動車業界のキーワードのひとつ「コネクティッド・カー」を挙げ、すべてのものがインターネットに繋がる「Internet of Things(IoT)」が重要であり、コネクティッド・カーの時代であると強調した。
ドコモの通信プラットフォームと自動車の関係を「インフォテインメント」「車両情報管理」「回線管理」という3つのキーワードで説明するのは、同副社長の吉澤氏だ。モバイルの情報通信は、「通話」から始まり「インターネット」「Machine to Machine(M2M)」へと進化した。さらにすべての人やモノがクラウドに繋がるIoTの世界へと移行しつつあると説明。IoTという環境は「自動車・交通」だけでなく「物流」や「重機・設備」「見守り・防犯」といった分野に関わる企業の生産性の向上や、新たな価値の創造に期待されていると語った。
国内の市場規模という意味では、IoTの回線に占める自動車関連は4割程度だといい、成長率は年率3割以上を示しているという。世界規模では2020年で売り上げ3兆ドル、接続台数300億台といった予測もたてられている。
同社の自動車関連業界での実績については、1979年の「自動車電話」からスタートし、「車載通信モジュール」や「位置情報サービス」など、2015年に至るまでさまざまなものが展開されている。こうして長い期間携わってきた結果、自動車関連ビジネスにおいて評価され、また強みを持つことができたという。今後はソリューションの幅の広さや通話品質・通信品質、そして顧客基盤といった同社の特徴をさらに強力に進めていくとした。
IoTが自動車分野に広がる現環境について同氏は、「走る」「止まる」「曲がる」という要素に「つながる」という要素が加わったと説明。「点」のビジネスから「面」のビジネスへと環境が変化し、新たなプラットフォームが求められていると判断したという。同社のモバイル事業、スマートフォンビジネスの「認証」「配信」「課金」「顧客管理」「決済」といったノウハウはコネクティッド・カービジネスに適応できるとし、また提供しながら市場の成長を促進していきたいとした。
冒頭の3つのキーワードについてはそれぞれ、インフォテインメント基盤は「音声認識」「意図解釈」「先読み」といった「対話型音声エージェント」の提供や、それに伴うクラウドに蓄積された情報の活用推進。車両情報管理基盤は、「車両情報」「走行情報」「故障情報」といった情報の集積と各社サービスとのセキュアな連携を実現することによる、安全・安心な基盤の構築。
3つ目となる「回線基盤」は、すでにM2Mプラットフォームとして提供中であり、回線の一元管理に一役買っていると評した。特に組み込み型のSIMであるeSIM(Embedded Subscriber Identity Module)を採用することでSIMカードの差し替えが不要になるなど効率的な運用が可能となるという。同社の回線管理基盤は、ほとんどの国・地域をカバーしており、自動車ビジネスにとって重要なグローバル対応を実現しているという。
通信料についても、接続先に応じて課金を分ける機能の実装を目指しており、たとえば車両情報を取得するための通信については自動車メーカーの利用分として、インフォテインメント活用における通信についてはドライバーの利用分として課金するといった課金管理を構築し、コネクティッド・カーの普及に必須なビジネスモデルをドコモが支えていきたいとした。
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