アプリ開発やKDDI ∞ Labo参加の費用は、すべて石松氏の自己資金でまかなっているという。しかし、一般的なスタートアップと違い、医師として現役で働きながらサービスを開発することのメリットは大きい。たとえば、自身が医療現場に従事していることによって、現場でしか得ることができない課題意識や医師間のネットワーク、さらに医局長へサービスのテスト開発を直接打診できるなどが挙げられる。石松氏自身が医師としていることが、このサービスの優位性を高める要素と言えるかもしれない。
「サービスを医療現場に広げていくことで、医師がメインで利用するメディアが生まれてくる。ゆくゆくは医療機関や製薬会社に提案して効果的な広告を出すことは一つのビジネスモデルとして成り立つ。他にもビジネスモデルを模索していく」(石松氏)。
3カ月におよぶ試験運用が終わり、思った以上に医師からの反響が大きいことも実証できた。Dr.JOYはスマートフォンアプリでiOSとAndroidで1月27日にリリースした。また、すでに都内など複数の病院では導入が内定しており、医療現場への浸透していけば事業展開の機会も拡大していく、と石松氏は語る。
3カ月間を振り返って、あらためて石松氏にインキュベーションプログラムの効果は大きいと指摘する。
「3ヶ月間を振り返って、サービスのフォーカスを見出すことができた。また、1人では製薬会社にもヒアリングに行くことはできなかったが、一緒に活動してくれるパートナーがいたことで成長することができた。事業計画の細かな作成やいくつものアセットを活用させてもらったことで成長できた。また、KDDIにはヘルスケア向けの効果的なシステムを開発しているが、まだまだ病院に浸透していないこともわかった。これを縁に、医療現場に新しいサービスやシステムを導入するきっかけにもなれれば」(石松氏)。
大手企業に勤める松井氏も、大企業とベンチャーとが連携することの意味は大きいと語る。
「インターネットを活用した新しいサービスは、これからのインフラになりうる。特に日々の変化や進化が激しい分野では、既存企業だけではなく、スタートアップと協働することは、大きな可能性を秘めている。普段の仕事は1を10、10を100にするような仕事が多く、こうしてゼロから1を生み出すような場を自分自身初めて経験させてもらった。メンターであると同時に、代表石松氏のもとで働く一社員としての気持ちももちながら、色々と考えたことを議論することができた。KDDI∞Laboの仕組みは本当に良くできていて、自分自身もいい刺激となり大変充実した時間を過ごさせてもらった。この様な機会を頂き感謝している」(松井氏)。
沖縄で生活しながらプログラムに参加した石松氏は、地方からKDDI ∞ Laboに参加することの意味は大きいという。「定期的に東京に行き、刺激とフィードバックをもらい地方に戻って作業を行うことで、地方にいただけではできない経験ができる」と石松氏は語る。また、過去のプログラム参加者やKDDIがもつネットワークをもとに、さまざまな分野の起業家と出会うことは大きな成長の機会にもなっている。
次回、第8期となるKDDI ∞ Laboはを2月20日までエントリーを受付中。期を重ねるごとにプログラムもよりブラッシュアップされながら、参加するスタートアップたちの成長を後押ししていく。同時に、これまでのプログラム参加者の先輩起業家から後輩起業家へのアドバイスやネットワークといった縦の関係ができるなど、プログラムを通じた1つのコミュニティにも発展してきている。東京だけではなく、地方の起業家にとっても、プログラム参加は大きな成長の機会と新しい出会いが生まれる場所になることは間違いない。
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