BASEは2月5日、オンライン決済サービス「Pureca(ピュレカ)」を子会社化し、春より決済サービス「PAY.JP」を提供することを発表した。同社が運営するネットショップ開設サービス「BASE」の関連サービスではなく、決済に特化した新サービスになるという。なお、Purecaの買収額は非公開。
PAY.JPは、数十行のシンプルなコードを加えるだけで、サイトに決済機能を追加できる開発者向けのサービス。一般的な決済サービスでは審査に数週間かかるが、PAY.JPではこれが数日で終わることも特長だ。決済手数料はまだ未定とのことだが、他のサービスと比較しても競争力のある価格に設定する予定だという。まずはクレジットカードから対応する。
実は今回子会社化したPurecaは、2012年8月にサービス自体は発表していたが、ローンチはしていなかったのだという。「Purecaはシステムを作り続けていて、そろそろローンチのタイミングだった。ただ、決済サービスがいろいろと立ち上がっていることもあり、同じところを追いかけているのであれば一緒にやろうという話になった」とBASE代表の鶴岡裕太氏は振り返る。そのため、サービス名はPAY.JPに変わったがPurecaの仕組みを利用しているそうだ。
BASEではこれまで「お母さんも使える」をコンセプトに、ネットショップの開設や運営を簡易化したサービスを運営してきた。今後は、BASEで追求してきた「ネットショップで簡単にモノを売れる」仕組みに加えて、ネットのすべての決済シーンを簡易化することで、消費者が「あらゆるものを買いやすい」世界を作りたいと鶴岡氏は話す。
また、BASEではシンプルなECサイトの構築や運営にフォーカスしているため、「月商数十億円規模のECサイトには向いていなかったが、PAY.JPは決済機能に特化するので、どんなに大きいECサイトでも需要は満たせる」(鶴岡氏)。そのため今後は、BASEでサイトを開設したEC事業者が一定の規模に成長し、自社でより本格的なECサイトを立ち上げるタイミングなどで、PAY.JPを導入してもらう流れを作っていきたいという。
ところで、決済領域ではLINEが12月からモバイル決済サービス「LINE Pay」を提供している。また時期は未定だがアップルの決済サービス「Apple Pay」などもじきに日本に上陸するだろう。こうした“巨人”が手がけるサービスと、BASEはどう対抗していくのか。
この点について鶴岡氏は、「LINE Payなどは基本的に決済機能だけ。PAY.JPは決済もできるし、個人情報を紐付けて配送もできる。イメージはPayPalのように、同じIDでいろいろなECサイトで買い物ができるもの。サイトごとにアカウントを取らないといけない日本のECをスリム化したい」と説明。直接的な競合にはあたらないと考えている。
同社がこれまで手がけてきたECサイト構築のBASEは、サービス開始から約2年で15万を超える店舗に導入されているそうだ。利用者は全国各地におり、主に口コミで店舗が増えているのだという。製作に手間がかかる伝統工芸品や量産に時間がかかる商品を販売する店舗などに利用されており、楽天やAmazonなどのモールとは差別化を図れていると鶴岡氏は語る。
ユニークな店舗としては、主婦が3Dプリンタで作ったオリジナルのクッキー型を販売するショップや、手作りの家具や雑貨を夫婦で販売するショップなどがある。また、味は問題ないが市場に出せない傷ものの果物を販売する農家などもいるという。さらに、タレントの田村淳さんや板野友美さん、西野亮廣さんなどがショップを開設している。
BASEの初期費用と運用費用は無料で、決済手数料も銀行振込と代金引換は無料だ。クレジットカード決済、Pay-easy決済、コンビニ決済の場合のみ決済金額の3.6%+40円を決済手数料として徴収している。年間の流通額は数十億円後半とのことだが、現在はまだ赤字。増資もしていることから当面はユーザーの拡大や利便性の向上を優先するとしている。
「BASEが目指しているのは、インターネットでものを売る、買う、交換する、誰かに送るなど、“価値に関わる拠点”になること。そこに対して最短でアプローチできるものがあれば今後もやっていきたい。いまはBASEとPAY.JPという2つのサービスがあるが、これらは目的に向かうためのいち機能と位置づけている」(鶴岡氏)。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス