中国の検索サイト「百度(バイドゥ)」の日本法人であるバイドゥは1月30日、日本における戦略を語った。2014年9月にバイドゥ代表取締役 駐日首席代表に就任したCharles Zhang氏が初めて報道陣の前に姿を現し、世界でのバイドゥの実績や日本での取り組みを説明した。
バイドゥといえば、2013年末にPC向け日本語入力システム「Baidu IME」と、Android端末向け日本語入力アプリ「Simeji(シメジ)」で入力した情報が、無断で同社のサーバに送信されているとして大きな問題となった。また10以上の自治体で、Baidu IMEで入力した情報が送信されていたことも報じられた。
これについて同社は、基本的にユーザーの入力情報をサーバに送る場合は事前に許諾を求めており、送信する情報にもクレジットカードや住所、電話番号などの個人情報は含まれていないと説明。ただし、Simejiについてはバグにより一部のデータが送信されていた事実を認め、緊急アップデートで対応した。
バイドゥが日本で事業展開する上では、やはり信頼の回復が重要となる。Zhang氏は、「2013年12月のことは一生忘れない」と語り、出張で日本に訪れていた当時、自身も泊まり込みで対応にあたったことを明かした。また、その危機を乗り越えたことで社員の結束力が高まり、より信頼できる優れたプロダクトを作るきっかけになったと振り返った。
「社員たちは2週間対応したが、そこで日本の社員は1人もやめなかった。Twitterで『これからもSimejiを使い続ける』と応援してくれたユーザーもいて、そのコメントをみて私たちは涙を流しながら頑張った。そして、ユーザーのために必ずいいものを作ろうと誓った。経産省や総務省にも何回もいってヒアリングした」(Zhang氏)。
この1年は信頼を取り戻すための取り組みを進めてきた。日本の社員が主導して、国内事情を加味した製品設計や開発プロセスを徹底。また2014年12月には、事業部単位で情報セキュリティのマネジメントシステム「ISO27001」を取得した。今後は定期的に、FEP技術など同社製品に使われている技術や、製品運用に関する事項を分かりやすく開示、説明していくという。
日本では検索といえば「Google」や「Yahoo! JAPAN」を思い浮かべる人が多いと思うが、中国ではバイドゥが7割ものシェアを獲得している。ユーザー数は約4億5000万、1日のページビューは約60億、1日の平均検索回数は約25億回に及ぶ。2014年第三四半期の売上高は2430億円で、年成長率は52%。2014年8月時点の時価総額は8兆円を超えた。
同社は2006年に日本市場に進出。現在は約30人の社員が働いている。中国では圧倒的な検索シェアをもつバイドゥだが、日本では検索以外のアプローチで事業を展開している。大きくは日本語入力アプリ「Simeji」を中心とした日本国内向けサービスと、日本企業の中国進出支援の2つだ。
同社の主力製品であるSimejiは、1月22日時点で累計1300万ダウンロードを超える。内訳は2008年にリリースしたAndroid版が1089万ダウンロード、2014年9月にリリースしたiOS版が275万ダウンロード。特にiOS版は急成長している。1月にはPC(Windows)向けの配信も開始したほか、2月には大型スマートフォンやタブレットでの文章作成を支援する有料版を提供する予定。
中国向けのビジネスとしては、広告・マーケティングとライセンスの2つの事業が中心となる。バイドゥの中国向け検索連動型広告は、楽天や良品計画、日本テレビ、ANAなど幅広い企業に利用されており売上も増加傾向にあるという。また、2月下旬には「地球の歩き方」が保有する訪日中国人向けの情報を中国の「百度旅行」に提供。このほか、訪日中国人向けのモバイルSIMなども提供する。
ライセンス事業では、テレビ東京のアニメ「テンカイナイト」と、日本テレビのアニメ「デス・パレード」を、それぞれ日本の放送から数時間後に配信。また、バイドゥの検索結果に提携企業の偽サイトが表示された場合には、商標証明書や営業許可書などの提供を受けて審査するなどして、正規の情報やコンテンツの提供に努めているという。
今後は、この日本国内向けサービスと中国向けビジネスの展開を同時に加速させることで、日本での信頼を獲得しつつ事業を拡大していきたいとしている。
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