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スモールスタートで地道に継続--CMOアワード受賞者のマーケティングアプローチ - (page 2)

齋藤公二 (インサイト)2014年12月27日 09時30分
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 続いて、KDDIウェブコミュニケーションズの高畑氏が、同社が提供するウェブサイトビルダー「Jimdo」のコミュニティ活動の取り組みを紹介した。Jimdoは、企業サイトなどのウェブサイトを簡単に構築できるオンラインサービスだ。2006年からデジタルマーケティングに力を入れてきたが、2年ほど前に「マーケティング全盛の時代だからこそ、逆張りをしたい」と発想を転換した。

 「データでは見えないユーザーの行動がある。たとえば、カフェで、オンラインで靴を買おうとしていた男性がいたとする。カートに入れて考えているときに、彼女が来て、店を出ようと声をかけた。男性はPCの電源を落として買うのをやめた。データを見れば1つの離脱にすぎないが、実際には、モノを買うことよりも、彼女と一緒にいることを優先した。そうしたユーザー一人ひとりの感情はデータからは見えてこない。それを見ようとしないで進めることに危惧を抱いた」(高畑氏)。

 そこで「コミュニティドリブンマーケティングに思いっきりシフトした」という。その具体的な取り組みが「Jimdo cafe」だ。Jimdo cafeはもともと、ユーザーがカフェやコワーキングスペースに集まって情報交換するイベントを自主的に開催したのがはじまりだ。コミュニティ活動を支援するうちに、直営店を運営してのサポートへと発展。現在は全国40カ所に店舗ができ、3月までには50店舗を超えるスピードで拡大しているという。


KDDI ウェブコミュニケーションズの取締役副社長の高畑哲平氏

 「おもしろいのは、カフェでの相談のほとんどが、サービスの機能や使い方ではなく、人生相談とビジネス相談になっていること。サービスの課題はビジネスにあることが多いことも背景にある。ただ、もしその課題を解決できるなら、想定できなかった価値が生じる。その機会を提供することがとても大事だ」(高畑氏)。

 こうしたコミュニティ活動の支援といった施策は、数字で評価することが困難だ。別井が実際にどう評価しているのかを聞くと、高畑氏は「デジタルマーケティングは死滅させた。お客様に感動してもらい、感動したお客様が次のお客様を連れてくる。それを信じきれるかどうかだ」と断言。実際に売上があることから、間接効果アリと判断しているとした。また、安田氏は「マーケティングを営業や販促をしなくても売れる仕組みづくりと定義するなら、Jimbo cafeは、逆張りというより、本質をついた取り組み」と評した。

 続いて、DeNAの彌野氏が、さまざまな事業に横串を刺す「360°統合マーケティング」の取り組みを紹介した。DeNAの事業は、ゲームにとどまらず、「マンガボックス」でのマンガ配信、食品・日用品の情報を扱う「チラシル」、インテリアの「iemo」、ファッションの「MERY」、ヘルスケアの「MYCODE」、球団経営など多岐にわたる。これらを部門別で見ると、ゲーム事業、EC事業、キュレーション事業、ヘルスケア事業、新規事業に分けられ、これらに横串を刺すかたちで、マーケティング本部が設置されている。

 「マーケティング本部には約100人在籍しているが、そのうちの約40人が分析やユーザーリサーチを担当している。ユーザーの嗜好性を理解することが重要。事業が多岐にわたるからこそ、それぞれの事業で、どんな人が何を求めていて、何があったら使ってもらえるか、何が使いにくくさせているかなどを把握しようとしている」(彌野氏)。


DeNA執行役員マーケティング本部本部長の彌野泰弘氏

 360°統合マーケティングは、マーケティングパートナーと連携しながら、テレビCM、広報/PR、ペイドアド、ソーシャル、オウンドメディア、社外コラボ、グループマーケィング、スポーツマーケィングといった全方位のチャネルを使ったマーケティングのことだ。1つのチャネルでの成功事例を横展開したり、組み合わせたりすることで、効果を高めている。

 たとえば、マンガボックスの数百万ユーザーに対してほかのサービスをレコメンドしたり、動画配信サービスでベイスターズの試合やキャンプ中継を配信したりといった連携だ。直近では、マンガボックスのテレビCMとTwitterを連携させる施策や、そこで得たノウハウを、新作ゲームアプリ「ファイナルファンタジー レコードキーパー」の共同キャンペーンに活かすといった取り組みを実施した。

 「プロダクトイノベーションだけでなく、マーケティングイノベーションをプラスして、マーケティングで新しい手法を生み出していくことを重要視している。特に、テレビCMとソーシャルとか、テレビCMと広報/PRといった掛け算に注力している」(同氏)。

 これに対し、押久保氏と安田氏からは、プロダクトアウトからマーケットインへの転換は難しくなかったのか、どう説得していったのかといった質問が出た。彌野氏は「最初に興味をもったプロデューサーを巻き込んで、小さな成功事例をつくる。うまくいくと、どうやったのかと取り組みが知られるようになり、少しずつ社内に浸透させていくことができる」と話した。

 ライオンの中村氏も同様で、「興味のありそうな人を巻き込んで、数字で証明し、データドリブンの考え方を徐々に浸透させていった。デジタルマーケティングを得意とする競合がいることもあり、経営層からの支援も得られた」とのこと。

 マーケティングへのアプローチは各々異なるものの、共通しているのは、スモールスタートからの地道な活動を続けてきていることだ。最後に、別井は「顧客はどんなインサイトを持っているかを常に考え、そこに向かって仮説を立てて、地道にPDCAを回し、成功事例を横展開させていく。とても地道な活動であることをあらためて感じた」と締め括った。

◇3人の受賞理由
第2回「CNET Japan CMO Award」--KDDIウェブコミュ、DeNA、ライオンに決定

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