CNET Japan Live 2014 Winter

日本の唯一の弱点であるマーケティングを補う、マーケティング・オートメーション

 12月4日、「『ボーダレス』がマーケティングの決め手~組織・手法・技術の垣根を取り払う~」をテーマに「CNET Japan Live 2014 Winter」が開催された。ビジネスをドライブさせイノベーションを促進する重要な要素となるマーケティングについて、講演やパネルディスカッションが行われた。

 ここでは、シンフォニーマーケティングの代表取締役である庭山一郎氏によるセッション「BtoB向け『マーケティングオートメーション』を正しく理解する45分」の模様をお伝えする。同社は、1990年に日本で最初のBtoBマーケティングサービスの会社として設立された。

  • シンフォニーマーケティングの代表取締役である庭山一郎氏

 庭山氏は、そもそも世界的に見ても「マーケティング」の明確な定義はないという。そこで庭山氏はBtoB企業のマーケティングの3つの流れとして、「ミッション」「部門名」「評価」の軸で説明した。まず日本では、リサーチが最初に入ってきたため、マーケティングというとリサーチのイメージが定着しているという。リサーチがミッションの場合は、部門名は商品開発・競合調査となり、評価はレポートの質となる。

 次に出てきたのが企業ブランドで、これをミッションとすると部門は広報やPR、マーコムとなり、評価は認知度(アウェアネス)となる。そして、これからは「案件創出」が主流になるとした。この場合、部門はデマンドジェネレーション、評価はROMI(Return On Marketing Investment)となる。それら3つの流れにおいて、マーケティングが使うのがMA(Marketing Automation)、営業部長が使うのがSFA(Sales Force Automation)であるとした。

 また、現在企業はSEOに多く予算を割いているが、社内にあるデータを整備する方がはるかに効率的であると庭山氏は指摘する。たとえば展示会で集めた名刺情報は有効なデータであるし、社員の引き出しには交換した名刺が2000~3000枚あるといわれている。さらにSFA/CRMにも多くの情報が眠っている。シンフォニーマーケティングでは、こういった情報から名寄せを行い、有望見込み客リストを作成する。すなわち、この部分がデマンドジェネレーションとなる。

  • BtoB企業のマーケティングの3つの流れ

  • デマンドジェネレーションの部分

 続いて庭山氏はMAについて説明した。MAは第三世代のSFAの補完機能として2000年代に米国で誕生した。また、MAを提供する企業も紹介した。それは2年前の資料であったが、多くの企業が買収されており、現在では大きく様変わりしている。その状況で、庭山氏は「MA企業はルーツが重要」であるという。たとえばメール配信システムから進化したものや、キャンペーンマネジメントから進化したもの、CMSから進化したものなどがあり、それぞれ特長や得手不得手がある。

 庭山氏はMAの役割として、4つのプロセスを紹介した。それは「見込み客を集める」「見込む客を育成・絞り込む」「有望見込み客を営業が受注する」「顧客の維持と売上の拡大」で、それぞれのプロセスが「展示会・イベント」「MA」「SFA」「CRM」に対応する。その上で、日本は案件を仕込む部分が弱いと指摘した。

 さらに売上の方程式を示した。「売上=案件数×決定率×案件単価」というものだ。このうち、案件単価を上げることはリスクが高いため、案件数と決定率を上げる必要がある。そして決定率を上げるにはSFAが、案件数を上げるにはマーケティングが有効となる。そこで「案件が受注にならない」「案件そのものがない」といった問題を解決するのにMAを使うべきであるとした。

売上の方程式
売上の方程式

 最後に庭山氏は、マーケティングオートメーションの成功の鍵として「選定」「導入」「運用」におけるポイントを紹介した。選定においては、まずはマーケティング戦略の基本設計を優先することとし、その上で「自分の会社がどういうマーケティングをやるのか」「運用するのは誰なのか」「MAの導入を目的にしない」を挙げた。

 導入においては、「自動化はできない」「道具を買ってもマーケティングはうまくならない」「導入は情シス任せにしない」「自社のコンプライアンスとの整合性」を挙げた。さらに運用においては「企業の売上に貢献できる体制を整える」「マーケティングのナレッジがないなら、社内だけで始めない」を挙げた。庭山氏は、「日本のたったひとつの弱点がマーケティング。それ以外はトップなのだから、そこをカバーすれば日本はもう一度、世界のトップと勝負できる」として、セッションを締めくくった。

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