この連載では、シンガポール在住のライターがアジア域内で注目を集めるスタートアップ企業を現地で取材。企業の姿を通して、アジアにおけるIT市場の今を伝える。
シンガポールのスタートアップ「TabSquare(タブスクエア)」が、飲食店の持ち帰りメニューの注文と支払いができるアプリ「SkipQue(スキップキュー)」を公開した。
ユーザーは、店名や料理名で周辺の飲食店を検索し、持ち帰りメニューを注文。食事を店頭にピックアップしに行く時刻を確認し、アプリ上でクレジットカードによる支払いを行うことができる。支払いが完了すると店で伝票が発行される。店側の担当者は専用のアプリでリアルタイムにメニューや待ち時間を変更できる。
TabSquareによれば、シンガポール人の71.2%が店の前に10人以上の行列が出来ていると店を替えるそうだ。その背景として、91.2%の人が行列に並ぶことを避けたいとし、また71.2%の人がランチにかける時間は45分以下だからだという。店がSkipQueを導入すれば、料理が出来上がった時点で取りにいけるので行列に並ぶ必要がなくなる。
TabSquareの共同創業者であるSankaran Sreeraman氏は、サービスを開発した動機について、「アジア太平洋地域、特にシンガポールでは、飲食業界における労働力不足が企業の収益圧迫とサービス品質の低下を招いている。同地域で浸透が進むEコマースやモバイルコマースといったテクノロジを取り入れる動きが同業界では遅れているが、費用対効果の良いソリューションを提供し、こうした状況を変えたかった」と話す。
サービスの収益源は、導入した店への月額課金。ソフトウェアやハードウェアのメンテナンスに加え、店舗スタッフのサービス利用に関する研修なども行われる。アプリを通じた割引などのキャンペーンを実施することも可能だという。今後は、アプリユーザーの属性や行動に関するビッグデータを活用した課金サービスのラインアップの拡充も検討していくという。ユーザーは無料でアプリを利用でき、今後も有料化の予定はないという。
Sankaran氏いわく、シンガポールにおいて同様のサービスを提供する企業はいないとのこと。米国など他の市場に存在する企業については、すでにパートナーとして協業を開始しているところもあるそうだ。
直近では、2015年末までにシンガポールにある飲食店400店舗へのサービスの導入、毎月10万件以上の注文を目指す。将来的には、食事のデリバリーや席を予約する機能など追加のサービスも実装する予定。そうすることで、「朝のコーヒー一杯の持ち帰りから、レストランで食事するランチ、カップルのお気に入りのバーでのデートなど、あらゆる利用シーンをカバーすることで、飲食にまつわるサービスをワンストップを提供できるプラットフォームにしていきたい」(Sankaran氏)としている。
シンガポールはあくまで事業展開のファーストステップであり、今後アジア太平洋地域の他国に展開していく計画があるという。すでにインドネシアのいくつかの店舗がサービスを導入しているそうだ。
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