この連載では、シンガポール在住のライターがアジア域内で注目を集めるスタートアップ企業を現地で取材。企業の姿を通して、アジアにおけるIT市場の今を伝える。
イスラム圏市場の中間層と富裕層の台頭にともない、旅行やファッションなどライフスタイルに関連するサービスをオンラインで提供する新興企業が増えている。イスラム市場に詳しい米調査会社DinarStandardによると、2012年のムスリム(イスラム教徒)旅行者の支出(アウトバウンド)は1370億ドルで、2018年には1810億ドルに達する見込みだ。これは、グローバルの旅行支出全体の12.5%に相当する。
特に、ペルシャ湾岸6カ国で構成する湾岸協力会議(GCC)加盟国(サウジアラビア、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦、オマーン、バーレーン)の人口は、イスラム圏全体の3%ほどにとどまるものの、旅行支出では31%を占め、突出した存在感を示している。このほか、中間層の台頭が目立つマレーシアやインドネシアなどを含む東南アジアのイスラム市場も活況している。
一方で、ムスリム旅行者の増加にともない、滞在先のホテルでハラル(イスラム教で合法という意味)食品を食べることができるか、などの宗教上の問題も増えている。礼拝場が整備されているか、ホテルの部屋からアルコール類の飲み物が取り除かれているか、などもムスリム旅行者にとって重要事項となっている。
こうしたニーズを満たすサービスを提供している企業の一つが、シンガポールに拠点を置く「CrescentRatings」だ。同社は、米クレジットカード大手のマスターカードと共同で「ムスリムにやさしい」旅行先をランク付けしたインデックスを開発した。インデックスは、ハラル食品や礼拝場の有無などを含め、ホテルを評価付けしている。
CrescentRatingsは国別のランキングも発表している。それによると、イスラム協力機構(OIC)加盟国で、2014年のイスラム教徒に最もやさしい旅行先として評価されたのはマレーシアだ。2位はアラブ首長国連邦、3位はトルコ、4位はインドネシア、5位はサウジアラビア。一方、OIC非加盟国でトップになったのはシンガポール。次いで、南アフリカ、タイ、英国、ボスニア・ヘルツェゴビナと続いた。OIC加盟国、非加盟国ともに、東南アジア諸国のランキング上位入りが目立っており、今後のムスリム旅行者の増加が見込めそうだ。
CrescentRatingsはまた、ムスリム旅行者向け旅行ポータルサイト「HalalTrip.com」を運営し、モバイルアプリ「CrescentTrips」を提供している。
HalalTrip.comでは「ハラル食品を使った料理を提供しているか」などのフィルタを使ったホテル検索が可能だ。スパ施設は男女で分かれているか、プールを使用できる時間帯は男女で分かれているか、女性専用のフロアはあるか、モスクは近くにあるかなどの条件で絞り込むこともできる。CrescentTripsは、旅程を作成できることに加え、飛行機内での礼拝時間を知らせてくれる。
イスラム市場の消費トレンドについて、2014年10月にマレーシアで創設されたハラル商品のオンラインマーケット「Zilzar」の最高経営責任者、Rushdi Siddiqui氏はロイター通信のインタビューで「イスラム教徒がマジョリティの国では共通したトレンドがある。それは、一人当たりの収入の増加、インターネット利用の増加、モバイル機器とモバイルコマースの普及だ」と述べている。
Siddiqui氏はまた、ハラル定義のコンセンサス欠如やハラル認証コストなどの課題があるとしながらも、ハラル市場が拡大することで相互理解が深まり、ハラル定義の明確化、コストの縮小につながると指摘している。
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