朝日インタラクティブは12月16日、ITを駆使して新たな製品やサービスを生み出し、今後の大きな成長と活躍が期待できるスタートアップ企業を表彰する「第2回 CNET Japan Startup Award」の表彰式を開催した。
この賞は、ITを活用して事業展開をしている創業5年以内・未上場のスタートアップ企業の中から、「CNET Japan」とスタートアップ企業を中心としたニュースメディア「THE BRIDGE」編集部による選考委員会が、今後大きく成長が期待できる企業をノミネート。選考委員会と読者投票により各賞を決定した。
最優秀賞には、スマートフォン向けフリマアプリ「メルカリ」を展開するメルカリが輝いた。
プレゼンターを務めた朝日インタラクティブ代表取締役の相楽剛は、受賞理由について「CtoC(個人間取引)市場は、Yahoo!JAPANや楽天をはじめ強豪がひしめく状況ながら、ダウンロード数、出品数、流通総額などあらゆる指標が新興サービスの中で突出している。メルカリがここまで成長したのは、サービス力、技術開発力、デザイン力、資金調達力など、スタートアップとしての諸々の体力が有機的に機能してきたからではないだろうか」と講評。
受賞したメルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏は、急成長の要因について「スタッフにはソーシャルゲーム出身者が多く、ユーザーのリテンションやARPU(1ユーザーあたりの月間売上高)を見ながらダイナミックにサービスを運営できている点」とコメント。
CtoC市場の今後の将来性と同社の事業展開について「今後世界が経済的に発展していく中で、“モノを買って、捨てる”が拡大していけば世界は大変なことになってしまう。リソースがひっ迫していく中でCtoCが重要になるのは必然。海外展開の先では日本の個人ユーザーが海外のユーザーにモノを売れる仕組みに挑戦したい」と語った。
CNET Japan賞には、世界中のプレイヤーと脳トレ系ミニゲームでリアルタイム対戦ができるスマートフォン向けゲームアプリ「BrainWars(ブレインウォーズ)」を展開するトランスリミットが選出された。
BrainWarsは、2014年3月のローンチから約半年で累計ダウンロード数が700万を突破。そのうち95%は海外ユーザーで、各国のAppStoreやGoogle Playでランキング1位や年間アプリ大賞を数多く獲得するなどグローバルで評価が高まっている。
「最初から世界を相手に勝負している点、そして広告などを使わずに自然増で急成長している点が素晴らしい。また、アプリのゲーム性のみならず、UIのわかりやすさ、スムーズにプレイできるようにするシステムの工夫も評価したい」(CNET Japan編集長 別井貴志)。
受賞を受けて、トランスリミット代表取締役の高場大樹氏は、「最初から世界を相手に勝負することを念頭にスタートさせたサービスということもあり、95%が海外ユーザー。結果的に日本ではまだ認知が低いが、今後は日本市場での拡大や世界でのさらなる人気獲得を目指してパワーアップしていきたい。『Clash of Clans』や『Angry Birds』など、グローバルで数億ダウンロードを達成しているゲームに勝負を挑みたい」と今後に向けた抱負を語った。
THE BRIDGE賞には、家庭用インクジェットプリンタで、銀のナノ粒子を含んだ特殊な伝導性インクを使って印刷するだけで簡単に電子回路を作れる「AgIC(エイジック)」を開発・販売するAgICが選ばれた。
AgICは東京大学大学院の研究室に在籍していた、代表取締役 CEOの清水信哉氏らが創業した“大学発ベンチャー”。大手製紙メーカーの三菱製紙が開発したものの、活用法が見つからずに埋もれてしまっていた「銀ナノ粒子インク」を、東京大学で指導教官だった准教授が電子情報学の研究に活用していたことを知った清水氏が、この銀ナノ粒子インクをコンシューマ向け製品として事業化できると考え、「AgIC」を生み出したのだという。
「技術を技術のまま、研究を研究室の中でとどめることなく、誰でも楽しめるプロダクトに落とし込んでいる点が素晴らしい。セレンティビティのチャンスを見極め、大手企業に眠っていた既存技術を活用してビジネスを生み出している点を評価したい」(THE BRIDGE代表取締役 平野武士氏)。
受賞した清水氏は、製品の市場背景として「最近スタートアップ企業でモノづくりが活発になってきたが、樹脂と金属しか加工できない3Dプリンタにはできることに限界があるという課題を感じていた。たとえばiPhoneであれば、その核になるものは内部の電子回路であって、それこそがiPhoneそのもの。ボディはガワでしかない。従来、試作用の電子回路をオーダーすると時間とコストが膨大に掛かりその課題を解決できるソリューションはなかったが、家庭用インクジェットプリンタを使って電子回路を簡単に印刷できるAgICによって、モノづくりのスピードが速くなるのではないか」と電子回路がモノづくりにおいて果たす重要性について語った。
同社の技術を活用した製品は、2015年から小学校の理科の教材として使用されるほか、グローバル展開も進めているという。
朝日新聞メディアラボ賞には、スマートフォンとBluetoothで連携するリストバンドによって、身体の動きに応じてさまざまな体験を生み出すことができる、子ども向けウェアラブルスマートトイ「Moff(モフ)」を開発・販売するMoffが選ばれた。
朝日新聞メディアラボ プロデューサーの野沢博氏は受賞理由について、「ウェアラブル端末の特徴を活かし、ハードとソフトを組み合わせて“遊び”や“おもちゃ”という誰もが経験する領域に変化を生み出した。子どもの成長と共におもちゃを買い替えなければならないという生活者の課題の解決に道を拓いた」とコメント。
Moffはリストバンドを着けた腕の動きを通じて身体の姿勢を認識し、連携するスマートフォンアプリ上でさまざまな体験が生み出される仕組みで、11月の販売開始以降、日米のAmazonでキッズカテゴリ2位を獲得するなど人気が急激に拡大しているという。特に米国では現在テックトイ市場が大きな盛り上がりを見せており、今後さらに販売とサービスの拡充を進めていきたい考えだ。
Moff代表取締役の高萩昭範氏は今後の事業展開への抱負として、「スマートデバイスのユーザー体験はディスプレイに向かうものばかりで、身体的な体験がないというのは多くのユーザー、特に子どもにとっては良くないこと。作っているハードはシンプルだが、スマートフォンと連携してさまざまなアプリでユーザー体験を拡張できるという特長を活かして、今後事業を拡大していきたい。目指すのは、ディスプレイを中心にした仮想空間におけるユーザー体験をなくして、人間の自然な動き・動作がそのままユーザー体験に変わる、現実空間を主役にした利用シーンを創出することだ」とコメントした。
今回ノミネートされた全20社の中からCNET Japan読者の投票によって決定する読者賞には、アクティビティ予約プラットフォーム「ASOViEW!(あそびゅー!)」を展開するカタリズムが選ばれた。全20社中、2位に大差をつけて多くの読者からの支持を得たという。
ASOViEW!は、旅行先で楽しめるアクティビティを探したい消費者と、現地でさまざまなアクティビティを提供し、集客がしたい事業者をマッチングさせるプラットフォーム。2012年8月のベータ版リリースから、掲載プラン数は3800件に拡大しているという。従来、アクティビティを提供する事業者は地元に置くチラシや宿泊施設での集客しか方法がなく、ウェブサイトやオンライン予約も十分確立していない状況だったが、このプラットフォームを活用して集客を効率よくできる環境を提供したい考えだ。ちなみに、ITに詳しくない事業者やユーザーに対応するために社内にコールセンターを開設し、サービスの利用をフォローしているという。
同社代表取締役の山野智久氏は、「宿泊予約やショッピングなどさまざまなプラットフォームがある中で、“遊びのプラットフォーム”はないという点に着目してサービスを作った。週末や余暇の時間を豊かなものにする、モノのあふれた時代に心を豊かにする遊びの時間を充実させるという課題を解決していきたい。全国各地にある魅力的なアクティビティをもっと身近なものにしていければ」とコメントしている。
なお最近ではYahoo!トラベルに情報提供するなど事業提携を拡大しており、今後はアクティビティに加えて遊園地、水族館、景勝地、海水浴場などの地域情報を拡充していくとしている。
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