カリフォルニア州オークランド発--米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所の法廷で米国時間12月5日、故Steve Jobs氏の顔がビデオモニターに映し出された。そこでは、当時Apple最高経営責任者(CEO)であったJobs氏に、デジタル音楽産業の草創期に同社が独占禁止法に違反したかどうかを判断するための質問が投げかけられていた。
これまで一度も公開されていなかったこのビデオは、Jobs氏が死去する6カ月前に撮影され、Appleを相手取った集団訴訟で原告団が証拠の1つとして提出したものだ。同訴訟は2005年に提起され、法廷での紆余曲折を経て、12月2日にようやく審問が開始された。原告団は、Appleが2006年と2007年に実施した「iTunes」ソフトウェアへのアップデートを利用して、競合する各種の音楽ストアに打撃を与えたと主張している。
Jobs氏は宣誓供述の中で、「われわれはレーベル各社と極めて明確な契約を結んでいた」と述べた。これらの契約では、Appleのデジタル著作権管理(DRM)システム「FairPlay」が破られた場合、「それはわれわれがレーベル各社から取得したライセンス契約に対する明らかな違反となり、レーベルはいつでも楽曲の提供を停止できる」と定められていたという。FairPlayは、他社の音楽ストアの楽曲ファイルを検出して、ユーザーがそれらの楽曲を「iPod」に読み込むことができないようにする技術だ。
Jobs氏はまた、RealNetworksなどの競合デジタル音楽ストアの取り組みについても尋ねられた。RealNetworksは、AppleのFairPlayをリバースエンジニアリングすることによって、iPodの所有者がRealNetworksの楽曲を自分のデバイスに取り込めるようにする「Harmony」というソフトウェアを開発していた。AppleがiTunesのアップデートを通じて繰り返しHarmonyに打撃を与えたことは、消費者体験を低下させたという点で競争を妨げる行為であり、Appleが市場で独占的な地位を行使した例でもあったと、原告団は主張している。
Jobs氏は、「将来はどうなるか分からないのに、顧客に互換性を保証するReal(Networks)のような存在について、われわれは大きな懸念を抱いていた。それはわれわれが保証できることではない。だからわれわれは、これらすべての人々に訴えられる可能性があった」と語った。RealNetworksについては、今回の訴訟では言及されておらず、同社の幹部が出廷する予定もない。
Jobs氏は競合各社のソフトウェアに打撃を与えたことを「副次的損害」と呼び、レコードレーベル各社が相矛盾する要求をAppleに突きつけたと繰り返し述べた。レコード会社は、楽曲の売り上げを伸ばすためにAppleのシステムを競合各社にも開放するよう求めながら、その一方で、Appleが継続的にDRM技術をアップデートしてハッカーを防止するよう求めたという。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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