タカラトミーは1961年(当時はトミー)、リモコン操作でモノをつかんで持ち上げることができるブリキロボット「Mr.MERCURY」(ミスターマーキュリー)を皮切りに玩具としてのロボット販売を開始した。1984年にロボットとの暮らしを身近なものにすることをコンセプトとしたオムニボットシリーズを展開。初代機は身長40cm、体重4.5キロの大型ロボット。リモコン操作のほか、コマンドをカセットテープに記録して何度も再現することが可能というもので、タイマー機能により決まった時間に特定の音声と動作を再生するプログラム機能も搭載されていたという。2007年にはオムニボットシリーズの進化版である「i-SOBOT」(アイソボット)を発売。世界最小の量産型二足歩行ロボットとしてギネスにも認定された。
2014年からのオムニボットシリーズは、いわば再スタートのような位置づけ。再始動の発表時には、シリーズ全体で2014年度で20億円、3年で50億円の市場規模を目指すと意気込む。
実際に2007年以降もロボットものについては企画され、例えば2012年にはアイソボットの後継機として試作した犬型ロボット「i-SODOG」(アイソドック)をおもちゃショーに出展するなど、基礎開発は進めていたという。「ただ商品化に至る前に、海外で新しい技術を搭載した魅力あるロボットが登場したんです。なので、まずはこれらを日本で扱うことを皮切りに、オムニボットブランドを立ち上げたほうがいいと判断しました」(木村氏)と説明する。
第1弾となったこの2つを選んだ理由として、専用のリモコンが不要であったことが大きいと振り返った。「今まではリモコンで操作するというのが当たり前だった。でもこれらは、ロボットが意思を持っているかのように動いてくれる。今までの“操作しなければ動かない”という概念を取っ払ったロボットなので、玩具業界でのロボット市場を切り開くには十分なインパクトを与えられるのではないかと。再度オムニボットシリーズとして立ち上げるには最適だと感じました」(木村氏)。
付け加えて、ハローミップはスマホでの操作が今の時代にあっていることや、自らバランスを取っている不思議さ、物を載せて運べるのが見た目にもキャッチーでわかりやすいと評価。ハローズーマーも、小型ペットロボットでも音声認識ができるというのは、未来感があると思ったという。
ことペットロボットといえば、かつてソニーが発売したAIBOがよく知られている。それを皮切りに玩具業界では多種多様なペットロボットが販売されており、ひとつの定番商品となっている。しかしながら、いまだAIBOのインパクトは強く残っているという。「当時は高価なペットロボットでしたけど、今はこれだけの性能や機敏な動きで、しかもAIBOと比較して安価な価格で販売できることを印象づけられる商品だと感じたこともハローズーマーを選んだ理由です」(木村氏)。
ハローミップならびにハローズーマーを実際に利用している年齢層についても伺った。購入そのものは1万5000円という値段だけに大人が中心となるため、使用者年齢というもののデータを取っているという。それによるとおおむね小学生が4割、50歳以上が4割と極端に分かれているという。「小学生はともかく、高校生や大学生といった若年層がもう少し興味を持つものだと想定していたので、シニア層の方が興味を示すというのは販売するまでわかりませんでした」(木村氏)と振り返る。
シニア層が興味を持った理由としては、ロボットへの憧れがある世代だからと分析。「以前オムニボットシリーズを展開していた1980年代はロボットに憧れる風潮があり、アニメではなく現実世界でロボットが登場しはじめた時期でもあり、子どものころに感じたインパクトを覚えている方から見ると、当時と比べれるとはるかに安価で高性能ですから、“やっとこの時代が来た”と感じていただいたのかもしれません」(山下氏)と推察する。
加えて、例えば子どもや孫、友人を家に招いたときに見せてみて話題のタネになりやすいという理由もあるとも付け加えた。「もともとオムニボットは“自慢したくなるようなおもちゃ”というコンセプトもありましたし、ロボットがいる遊び心のある生活を提供するということに、うまくはまったかと考えています」(木村氏)。
第1弾こそ海外メーカーと共同開発したロボットだったが、次は自社開発によるロビジュニアを発売する。デアゴスティーニ・ジャパンが創刊したロボット組み立てマガジンの「週刊ロビ」の幼少期を表現したものとなっている。価格は税別1万5000円。
二足歩行ができるロビに対してまだ幼少期ということで立ち上がることはできないが、ロビの特徴のひとつでもある、音声認識による会話ができる“おしゃべり”に特化したロボットとなっている。フレーズは約1000ほど用意されており、さらにしゃべるときにはフレーズを組み合わせるため、パターン数にすると億単位になるという。
立ち上がることはできないものの、首や手足を会話にあわせて動かすしぐさもあって、意思を持っている感覚をより引き立たせている。ほおっておいても自分からしゃべり出したり、赤外線により人のいる方向を感知して、ちゃんとその方向に顔を向けて話すという。曲を歌うこともあれば、カレンダー機能の搭載により、単に日時を読み上げるだけではなく季節にあわせた話題もしてくれるという。
ロビジュニアの魅力としては、前述のように会話パターンの豊富さによって、そのパターンが読めないことにあるという。もちろんたまにはとんちんかんな反応を示すこともあるが、ロビジュニアはまだ自力で立てない子どもだから許される雰囲気もあるという。「現実にも小さい子どもが突拍子もないことを言い出して、みんながクスッと笑ってしまう場面はあると思います。1人暮らし専用のつもりではなく、家族の一員として迎えてほしいというイメージのもとに制作したので、会話のきっかけになれば」(木村氏)。
これはハローミップやハローズーマーにも共通することで、読めない動きや反応をすることが、ロボットが意思を持っているように感じさせるポイントだと語った。さらに、人や動物のように形作られていることも、感情移入には重要だとしている。例えばスマホの音声認識機能は充実しているものの、日常的に使われているとは言いがたい。「やはりスマホのような機械に直接に話しかけるのは抵抗があると思います。動物や人型のようにキャラクターとなるものがあると話しかけやすいかと。ロボットのほうが音声認識の活用が促進されるかもしれない。それにスマホの役割も兼ね備えれば、コミュニケーションロボットは楽しませるだけではなく、役に立つ便利なロボットという進化の方向に進んでいく可能性はあるかもしれません」(山下氏)
トーク特化型のロボットについても、今回のロビジュニアの技術は応用可能だとし、別のキャラクターで横展開することも検討しているという。ほかにも、別の話題に飛んでしまって、また戻ってくるような会話ができる技術もすでに存在していることもあり、人間同士の雑談的な会話ができる未来も予測できることから、玩具として販売できる価格帯で実現できるのであれば、会話の部分にも磨きをかけたいとしている。
今後もシリーズ展開を続けていく上で重視するのは、人間との間にあって楽しくなるロボット、そして身近な存在として感じられることだという。その身近な存在であるためには、外観や機能だけではなく、手に取りやすい価格帯に落とし込むことも重要だとしている。
「社会全体のロボットに対するとらえ方が変わってきています。それこそ社会の中心がロボットになるという雰囲気も感じられます。ハイテクで高級なものから、玩具メーカーのようなロボットもあっていいですし、市場は始まったばかりでこれから広がっていくと考えています。当然この次も控えており、またアイソボットの流れを受けたものも検討しています。玩具メーカーが提供するロボットの役割は“楽しくなる”が求められていると認識しています。また、玩具としてみると少し高価かもしれませんが、ロボットとして見ると1万円台はすごく魅力的であり、身近な存在と感じてもらえるためには、価格帯も重要です。もちろん技術開発は進めていますが、必ずしも最新技術を満載することが大事ではなく、いままでにある汎用的な技術の応用で工夫することで、人の心をつかむロボットも作れると思います。玩具メーカーだからこそできる工夫を凝らしたロボットを世に出していきます」(木村氏)
「これまでピンポイントで発売して終わってしまう商品もありましたが、今回のオムニボットシリーズは、会社を挙げて本格的に取り組むことを決めています。トミカやプラレールのように、ひとつのラインとして今後も展開し続けるようにさまざまな施策を考えていますし、玩具メーカーだからこそロボットというジャンルをやり続けたい。まだまだ1年目でこれからですが、タカラトミーの顔となるようなオリジナルロボットを創出するという気持ちを持って展開します」(山下氏)
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