英国の高名な理論物理学者Stephen Hawking氏は、ほぼ完全にまひした状態になる神経変性疾患を抱えており、他者とのコミュニケーションをコンピュータシステムに頼っている。
しかし、Hawking氏が使ってきたシステムは、数十年も前のもので、使いにくく、処理に時間もかかる。そのため、Hawking氏に新たな声を提供することを目指すIntelは、3年間にわたり同氏と協力して、新しい意思伝達プラットフォームの開発に取り組んできた。そして、Intelはロンドンで現地時間12月2日、Hawking氏向けに組み立てたシステムで、同氏の旧システムより2倍高速な「Assistive Context Aware Toolkit」(ACAT)を披露した。
ACATは、運動ニューロン疾患や四肢まひの人々を支援する現代的な意思伝達システムの基礎になり得るとの期待から、2015年1月より研究者や開発者に無償で提供される予定だ。ACATは使用者の状況の違いに応じたカスタマイズが可能で、タッチやまばたき、眉の動きなどの入力手段で意思伝達ができる。
Hawking氏は声明で次のように述べた。「この装置の開発は、世界中の身体障害者の生活を向上させる可能性を秘めており、人間の相互作用や、かつて意思を伝えることを阻んだコミュニケーションの限界を克服する能力という点で、先導的な取り組みだ」
Intel Labsの研究チームは、Intel製のソフトウェアを使って、Hawking氏が通常行っている入力に対応する意思伝達システムを開発した。こうして完成したプラットフォームは、速度と正確さが向上し、ウェブをナビゲートしたり、新しいドキュメントを開いたり、タスクを切り替えたりといった単純な作業の大幅な改善を可能にする。
たとえば、ウェブ検索を実行する場合、Hawking氏はこれまで、意思伝達用のウィンドウを終了し、マウスを動かしてブラウザを起動し、再びマウスを検索バーまで動かして、検索テキストを入力しなければならなかった。新しいシステムでは、これらすべてのステップを自動化している。
Hawking氏の既存の頬センサは、眼鏡に取り付けられた赤外線スイッチで検知し、同氏がコンピュータ上で文字を選択できるよう支援する。ユーザーの入力パターンを予測するモバイルアプリを提供している英国の企業SwiftKeyのソフトウェアは、Hawking氏が意思伝達のために入力する文字を大幅に減らすことができる。この情報がHawking氏の既存の音声合成装置に送信されることで、同氏のLenovo製ノートPCを通じて他者との会話が可能になる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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