三菱地所が海外企業や国内のベンチャー企業を対象にオフィス誘致や事業開発支援を行っているEGG JAPAN(日本創生ビレッジ)は11月28日、国内外で注目されているウェブサービス運営企業のコミュニティ構築担当者をゲストに招き、コミュニティの重要性や今後の可能性について考える「The Power of Community 日本とU.S.のコミュニティマネージャに聞くコミュニティの力」を開催した。
「新しいコミュニティの形、その可能性」と題したパネルディスカッションでは、Uber Japanの北尾恵子氏、Airbnb Japanの帯刀嘉晃氏、エバーノートの上野美香氏が登壇し、新しい価値観を世の中に広めていく上での苦労や工夫などを語った。いずれのサービスもここ数年でグローバルの利用者が急拡大している新進気鋭のサービスだ。
新しいサービスを普及させるためには、まず提供されるサービスの質が担保されなくてはならない。特にユーザー同士でサービスを共有するシェアリングエコノミーでは、サービスを供給するユーザー、サービスを利用するユーザーそれぞれの質にサービスの評価が懸っている。
この点について、空き部屋を提供できる人が旅行者などに宿泊を提供するAirbnbの帯刀氏は、「需要者(宿泊者)と供給者(ホスト)が相互に評価できる機能を導入し、質の悪いユーザーは自然淘汰される仕組みを作った」と語る。
こうしたアプローチはタクシー/ハイヤー事業者と協業してサービスを提供しているUberも同様で、北尾氏は「サービスの提供が終了したらドライバーと顧客が必ず相互に評価しなければならない仕組みを導入している。提携しているタクシー会社には顧客からの評価データをすべて提供しているが、“今まで聞けなかった利用者の声が聞ける”と喜ばれている」と説明した。評価が低いユーザーはサービスの利用継続が難しくなる、という自浄作用を生み出すことによりコミュニティの質を担保しようというアプローチが興味深いところだ。
また、登壇した3社はいずれも米国に本拠地を置くが、「米国に本社があることでやりにくいことは?」という質問に対し、Uberの北尾氏は「会社がフラットなのでやりにくさはない。“街というコミュニティを盛り上げる”という同じミッションのもと自由に動いているので、やりやすい。各都市のマネージャーがアントレプレナーのようなものだ」と回答。
その一方、エバーノートの上野氏は「製品は世界共通、マーケティングは各国に合わせてというアプローチだが、米国にいるとどうしても米国を中心に考えてしまう。ローカライズは日本語化ではなく日本の文化にあわせていくという作業だということを理解してもらうためには、社内でプッシュしていく必要がある」と話し、言語対応だけではないローカライズの重要性を本社に理解してもらうことが重要であると指摘した。
「新しい価値を理解してもらうためにチャレンジしていることは?」との質問に対しては、Uberの北尾氏は「使うためのハードルを下げる仕組みを導入することが重要だ」と述べ、企業とコラボレーションしたり、ブランドアンバサダーを立てたりなど、ユーザーの利用を促進するためのシーンを創り出すことがユーザーの拡大に繋がるという認識を示した。
またエバーノートの上野氏は、「ユーザーコミュニティの力は絶大」とし、ユーザー同士でサービスへの理解を深める場を提供することで、ユーザーのサービスに対するリテラシーが向上する可能性を紹介した。
一方、Airbnbの帯刀氏は75歳でホストをしている老婦人の話を紹介し、「Airbnbで人生が変わったという意見を聞いたときは本当に嬉しかった。全国のお年寄りがホストになれるように、努力していかなければ」と語り、サービスが世の中に受け入れられたときの喜びが新たなモチベーションに繋がることを示唆した。
最後に失敗事例を聞かれたエバーノートの上野氏は、2013年3月に不正アクセスの疑いを理由に全世界8000万ユーザーのパスワードをリセットしたことに触れた。事件が発生した直後はユーザーからネガティブな意見が多数寄せられたが、「ユーザーのデータを不正アクセスの脅威から守るために素早い対応をし、すべての情報をユーザーに開示していったことで、結果的に良い評価を得ることができた」と振り返る。多くのユーザーがコミュニティを形成するサービスにおいては、運営者がユーザーに対して常に真摯であることが重要であると強調した。
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