ドワンゴは11月28日、人工知能に関わる研究をする「ドワンゴ人工知能研究所」を社内に設置し、活動を始めたことを発表した。人類の課題である教育、エネルギー、環境、水資源、食糧、貧困、セキュリティなどに対して大きな貢献をなしうる、“日本発”の高度な人工知能の早期実現を目的に掲げる。
所長は、一般社団法人人工知能学会理事および副編集委員長である山川宏氏が務める。同氏が専門とするのは人工知能で、特に認知アーキテクチャ、概念獲得、ニューロコンピューティング、意見集約技術などに詳しいという。
今後、ドワンゴの気風と情報発信力を活かし、全脳アーキテクチャや汎用人工知能に関わる研究を、産学官を含むさまざまな機関と連携して進めていく方針。研究成果は随時発表するとしている。
歴史的にみれば、イースター島をはじめとした多くの文明が環境破壊によって崩壊しています。そして今世界は、地球全域の環境に対して生態系と人類の共同体の双方にとって取り返しのつかないダメージを与える臨界点に近づきつつあります。私達の存亡をも危うくするこの問題は広く認識されつつも、眼前の金融危機や地域紛争の解決に追われ、一致協力して解決にあたることはできずにいます。次世代にツケを回し続けている私達は、厳しい20年後の世界を生き抜く次世代に向けて何を準備できるのでしょうか。
明らかに地球温暖化を制御することは、それを達成する方法を理解できる程度に知的か否かという問題にかかっており、人類が移住しようとする惑星をテラフォーミングしうるかどうかも火星や金星の気候を再構築する程度に知的か否かという問題にかかっています。ですからもし、人と同じかそれ以上に知的な機械、つまり超人的人工知能(AI)を創造し利用できれば、科学技術の進展を大幅に加速することで、環境破壊の臨界点が訪れる以前に何らかの解決を見出すことも可能になるでしょう。
しかし、超人的AIの実現を阻む大きな壁として、機械自身が現実世界から知識表現を獲得できないという長年の問題がありました。このため20世紀末からの情報革命によるグローバルな情報共有も、人間が作り出した(主に言語的な)知識を流通させる範囲に留まらざるを得ませんでした。しかし近年、脳の神経回路を模したニューラルネットワークモデルを深い階層まで積み上げることで、人の脳(大脳新皮質)のように抽象的な概念を学習できるディープラーニング技術が成功を収めました。これは上記の課題の突破口となる画期的なイノベーションです。つまり、私達人類は、実世界情報から知識を獲得し、自律的に新たな創造を行える機械の実現に向けた、新時代の入り口に立っているのです。
ドワンゴは、人工知能における本当の技術革新は正にこれから訪れると考え、新たに人工知能研究所を設立します。そして次世代への贈り物となりうる、日本発での超人的AIの実現を目指します。その実現に向けた最速の道筋として、脳の神経科学的知見を参考にしながら、機械学習の組み合わせとしての脳全体の計算機能の再現を目指す、「全脳アーキテクチャ」という研究アプローチを軸として研究を進めていきます。このために当研究所では主にディープラーニング技術を拡張・発展による多様な知識を獲得や、記憶の座である海馬体の計算モデル構築を通じた創造性や不変性等の実現を目指す研究、さらに高次の知能に関わる脳器官に対応する機械学習装置を統合するための認知アーキテクチャ研究を進めます。
この研究構想を実現するためには、人工知能分野に重きを置きつつも、機械学習、神経科学、認知科学、ソフトウェア工学、発達科学、ロボティクスなどの幅広い学術分野との連携が必要です。そこでドワンゴのもつユニークな気風と情報発信力を活用することで産学官を含む様々な機関と研究連携を行いつつ、同時にそうした連携の場作り等にも貢献してゆくつもりです。
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