MasterCardのカンファレンスに参加するため、10月初旬にオーストラリアのシドニーを訪れた。同国はデジタルに関する新技術の導入に積極的な国として知られている。たとえば、政府は教育分野のデジタル化を推し進めており、すでに多くの教育機関でデジタルの教科書やカリキュラムが導入されているという。
また、滞在中に街中を歩いていて感じたのが、スーパーや飲食店などでの支払いにクレジットカードを使用する人が多いこと。MasterCardによれば、オーストラリアは世界的にも電子決済が浸透しており、2012年の個人消費支出に対する電子決済(クレジット、デビット、プリペイト)の割合は55%。これは韓国の75%に次ぐ世界2位の数字だ。なお日本はわずか17%で、まだまだ現金での支払いが主流と言える。
日本では「Suica」を始めとする多くの非接触ICカードが「FeliCa(フェリカ)」技術を採用し、FeliCaチップを搭載したいわゆる“おサイフケータイ”が普及しているが、欧米を始めとする海外ではMasterCardの非接触IC技術である「PayPass(ペイパス)」や、NFC決済サービス「Mobile PayPass」が広く利用されている。消費者は店舗のレジに設置された専用リーダーにカードやスマートフォンをかざすだけで支払いが完了する。ポストペイ式(後払い)のため、事前にチャージする必要もない。
MasterCardオーストラリア地区の代表であるアンドリュー・カートライト氏によれば、オーストラリアでもPayPassは浸透しており、100ドル以下のカードでの支払いの約半数が、かざして支払う“タップ・アンド・ゴー”となっている。同国の2大スーパーマーケットである「Coles(コールス)」の支払いに至っては、約7割にのぼるという。
オーストラリアでは、これまでに1000万枚以上のコンタクトレスカードが発行されており、2014年6月四半期のMasterCardの取引額は前年同期と比べて152%成長しているという。いまでは高齢者を含め多くの消費者が日常的にPayPassで支払っていると、アンドリュー氏は話す。
今でこそ非接触ICカードでの支払いが一般的になっているオーストラリアだが、店舗と消費者の双方の理解を得て利用してもらうまでには、7年の歳月を費やしたとアンドリュー氏は振り返る。当初は加盟店もそこまで前向きではなかったが、セブン-イレブンやマクドナルドなどの大手加盟店が導入したことで、加盟店、利用者ともに急速に増えていったのだという。
同社では、次のステップとしてデジタル決済サービス「Master Pass(マスターパス)」の導入を進めている。あらかじめクレジットカードやポイントカード、住所などの情報をクラウドに登録しておくことで、店頭のレジに表示されたQRコードをスマートフォンで読み取るだけで決済が完了するサービスだ。今後はNFCへの対応も検討しているという。
実店舗だけでなく、ECサイトなどオンラインショッピングでもMaster Passを選ぶことで、配送先やカード情報を入力せずにスマートに代金を支払える。またカード情報はMasterCard限定ではなく、Visaなど他社のクレジットカードやデビットカード、プリペイドカードにも対応している。
Master Passは2013年2月に発表され、これまでに世界4万以上の加盟店に導入されているという。日本ではUCカード、大日本印刷(DNP)とともに12月から提供を開始する予定だ。オーストラリアでは、たとえばシドニーの世界遺産(文化遺産)であるオペラハウスなどで利用可能だが、本格的な導入はこれから。今後も順次対応店舗を増やしていきたいとしている。
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