この連載では、シンガポール在住の筆者が、日本から東南アジアに拠点を移し、テクノロジ企業で働く女性を紹介していきます。赴任、転職、起業などさまざまなきっかけで新たなキャリアの一歩を踏み出した彼女たちに、仕事の奮闘や自身の将来、海外で暮らすことなどについて聞きます。
今回紹介するのは、シンガポールでクーポンサイト「J Passport」を運営するReginaa代表の大畠佑紀さん。クーポンを配信すれば、お店に行列ができることもあるほどまでに成長した同サービスの強みや今後の展開、また起業にいたるまでの経緯について聞きました。
日本でデータベースマーケティングの会社に勤めていた時にシンガポール、マレーシア、インドネシア、タイを視察のために周遊する機会がありました。その時に、シンガポールでイベントを企画し開催したのですが、参加者の1人から「このイベントはあなたのイベントだったね」と声をかけていただいたことが、自分で事業を起こすきっかけとなりました。
私がこちらに来た2011年は、シンガポールに携帯電話、特にスマートフォンらしさを活かしたマーケティングのソリューションやサービスはありませんでした。当地には人脈も実績もありませんでしたし、どのような事業を起こすかも決まっていませんでしたが、そのような状況を見て、自分が日本で培ってきたノウハウを活かせるかもしれないと思いました。
「J Passport」は日本食レストランや美容室など、シンガポールのお店で使えるクーポンを集めたサイトです。2013年12月にサイトを立ち上げ、現在は約40のブランドが約200店舗で使えるクーポンを配信しています。会員数は約9万人で、そのうち女性が約6割。会員の約9割が地元のシンガポール人で、その数は人口の約2%に相当します。2014年内に10万人を突破する見込みです。
サイトで紹介しているのはいわゆる「プレミアムブランド」に限っており、提供する料理やサービスについて一定の品質を保ったお店のクーポンが集まっています。企業は月額300シンガポールドルからクーポンの配信や、ブランドに付与されているアカウントのフォロワーへのメール送信などが可能で、追加費用で全会員へのメール送信や動画などリッチなコンテンツ制作も可能です。
飲食店、特にラーメン屋が人気です。山頭火のアカウントには約1万5000人のフォロワーがいますが、そのうち5~10%の会員が毎月クーポンを使ってくれます。一幸舎は新店舗を出店する際に集客を図りたいという要望があり、ラーメンを一杯頼むともう一杯が無料になる1 for 1キャンペーンのクーポンを配信したところ、2~3日間行列が途切れませんでした。
とんかつの銀座梅林も人気で、アカウントのフォロワー数は約1万人。ランチとディナーの間のお客さんがあまり来ない、いわゆるアイドルタイムの時間帯の回転効率を高めたいという要望があり、15~18時までの間を「クレイジーアワー」と称して時間限定のクーポンを配信したところ、通常の2倍強のお客さんが来店しました。
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