シャープは9月12日、MEMS-IGZOディスプレイの技術説明会を開催した。MEMS-IGZOはIGZOの名を冠しているところから、現存のIGZOの一種と思われがちだが、実際は液晶やプラズマ、有機ELなどと並ぶ新たなディスプレイ技術の1つだ。言ってみれば現在IGZOと呼ばれているものは液晶-IGZOであり、MEMS-IGZOとは原理や構造がまったく異なる。シャープとピクトロニクス社との共同開発で、MEMSシャッター技術を持つピクトロニクスとディスプレイ製造技術のあるシャープがそれぞれの強みを用いて開発している。
MEMS-IGZOの利点は、MEMSシャッター、スリット、バックライトだけで構成されており、高いバックライトの透過性と省電力を誇る。従来の液晶ディスプレイは、バックライトの光をカラーフィルタやTFT層、偏光板などを透過して表示するため、どうしてもバックライトの光量が低下してしまう弊害がある。その点、MEMS-IGZOはバックライトに3原色LEDを使用しており、そのLEDの色をそのまま表示させることが可能。カラーフィルタや偏光板などを使用せず、バックライトの光を効率的に使用できる。つまり少ない電力量でも十分な表示が可能となるのだ。
シャープ代表取締役 専務執行役員の方志教和氏は「ディスプレイの高精細化と狭額縁化はいずれ限界を迎えるが、省消費電力のニーズは今後も続く」とMEMS-IGZOの優位性を話す。
バックライトの3原色LEDの使用は、カラーフィルタによる減光を防ぐだけでなく、高色純度、高色再現性をも実現する。映像信号規格のNTSC比120%を実現する鮮やかな色を再現する。
高色純度と高色再現性により、外光下でも視認しやすくなっている。液晶ディスプレイは、日差しの強い日中の下で画面が見えづらくなってしまう弱点があるのだが、MEMS-IGZOは強い外光の下でもクリアな画面で表示ができる。さらに液晶は高温や低温など、極度の温度変化にも弱いが、MEMS-IGZOは、マイナス30度から80度の環境でも動作に影響が少なく、優れた耐環境性能を誇っている。
MEMS-IGZOが持つ現時点での弱点と言えば、解像度の低さだ。(液晶)IGZOの特徴の1つに高精細が挙げられるが、MEMS-IGZOは、7インチで800×1280ピクセル程度と、解像度に限ってはまだ発展途上と言える。そういう意味では、MEMS-IGZOと(液晶)IGZOは、それぞれに特徴や特色があり、競合するものではなく、使い分けるものと考えられる。
MEMS-IGZOの今後のロードマップとしては、タブレットや車載向けのサンプル出荷を開始し、量産技術の確立や製造コストの低減に取り組む。同時に高精細化や高視認性を高める高性能化を図り、2016年にはスマートフォンやタブレット向けへのサンプル出荷を目指す。商品として量産されるのは2017年以降となる予定だ。
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