シャープは7月7日、6月に開発発表した自由な形状のディスプレイを設計できる「フリーフォームディスプレイ」の説明会を開催した。開発背景や今後の展開について話した。
フリーフォームディスプレイは、四角い形状であるという従来のディスプレイの常識を打ち破り、丸型や穴あき型など自由な形状を可能にする最新技術。シャープでは2017年をめどに実用化を目指す。
従来の液晶ディスプレイには、額縁と呼ばれる外側部分の一方に駆動回路スペースが必要となり、そのため表示面積が狭くなってしまっていた。そこでシャープはその駆動回路を集積し小型化することで、パネルの外周部に駆動回路スペースを設けたシステム液晶パネルを開発。表示面積をより広く保てる狭額縁を実現した。
フリーフォームディスプレイは、狭額縁化をさらに進化させ、回路部分をパネルの中に分散配置することで、超強額縁化を実現。これにより、自由な形状でのディスプレイが可能になったとしている。
シャープのディスプレイデバイス開発本部表示モード開発センター所長である伊藤康尚氏は「2年ほど前、液晶ディスプレイの競争軸や価値をどこで訴求するか社内で議論した。その際、高コントラスト、色がきれいといったディスプレイの基本性能は大事だが、いずれこの技術競争は飽和するだろうという危機感があった。そこで新たな競争軸としてデザイン性を追求できればと思い、フリーフォームディスプレイの開発を開始した」と開発当時を振り返る。
その際小型ディスプレイであれば、システム液晶パネルで事足りるが、中型以上になると技術的に困難になると判断。そこで生み出されたのが、パネル内に回路部分を分散配置させることだったという。
「コロンブスの卵的な発想だったが、とあるエンジニアが回路を画面の中にちりばめようと言い出した。この方法でやってみたところ見事に動作し、思いもしなかった発想の転換によって技術開発が可能になった」(伊藤氏)と話す。
駆動回路を分散配置することで、配線が表示領域に入り込むため、パネルの開口率が若干犠牲になるが、IGZO液晶の本来持っている低消費電力性能やバックライトを工夫することで、それほど開口率を犠牲にすることなく、フリーフォーム化を実現できたとのこと。
伊藤氏は「フリーフォームディスプレイはシャープだけの技術と認識している。IGZO液晶を他社に先駆けて実用化している強みもあり、すぐに他社に追従されるものではない」とした。
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