ヒットの法則からリーダー論まで--「龍が如く」の名越氏が語るクリエイターのあり方 - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2014年09月09日 09時00分

デジタルは確実に裏切る。自ら行動して体験を

 そしてゲームクリエイターのあり方として「世の中をもっと知ってほしい」ということを強調した。仕事に追われて家と会社との往復といった生活になりがちではあるが、世の中の動きに敏感であるためには、さまざまなことについて自ら行動して体験するしかないと語る。

 名越氏は「デジタルに頼る限界、その基準を持っておかないと、デジタルは確実に裏切る」ということも語った。食べ物や映画などのレビューをネットで見て善し悪しを判断するのではなく、気になることがあったら自ら体験することが重要だとし、体験せずにそこで損をしたくないという気持ちになるのは「デジタル依存の病気」という。自ら体験して感動することを避ける行為であり、それでいて他人を感動させようとするのはおかしいこととも付け加えた。

 このほか仕事面においては、名越氏が考えているヒットの要素は「とにかく認知が高く、誰もやってないことをやる」で、半分以上ヒットすることが担保できるぐらい重要な要素だとした。また仕事については早さと正確さの2軸、つまり4択で考えているという。理想は「早くて正確」をだが、これには狙ってできることではなく運も必要。また仕事をする上で「遅くて間違っている」ことを選ぶ人はまずいない。つまり「早くて間違っている」か「遅くて正確」の2つが残る。仕事のさまざまな場面でこの選択が迫られ、そこで人間性が表れるという。

 その仕事において試行錯誤する時間がある場合なら、早く作業をしたほうが間違っていても修正がきく。一方でコストなどの問題で時間をかけてでも精度を上げたほうがいいなど、プロジェクトや周囲の状況によって選び方は変わってくる。名越氏は、仕事をする上ではこのふたつに迷うこととなるが、自分が大事にしているものが何か、そして何が求められているのかを見極めて選択していけば、いい結果に結びつくのではと語った。

リーダーに大事なのはわかりやすい人間になること

 質疑応答はかなり時間がかけられ、さまざまな質問に対して名越氏は丁寧に回答した。

 前述のように若い世代が入って世代交代が進んでいるなかで、世代間のギャップを埋めることに対して取り組んでいることについて。名越氏は、仕事をしたりゲームをしたりするうえで普遍的なもの、これを「道理」という言葉で表現したが、それに逆らうようなことはしないという。そしてその道理は経験が蓄積されないと他人に伝えられないもので、若い人が何かをするときに成功確率を上げてあげることが、キャリアのある者としての務めとした。

 そしてもうひとつ。最新のトレンドを追いかけることそのものは任せるにしても、若い子たちが面白いと思っているものに対して「ふーん」と無関心ですませるのではなく、どこが面白いかを実際に触れたり体験したりして理解することが大事だと説いた。また、龍が如くのトレーラー制作の作業も自ら手がけるなど現場作業を通じて、最新のツールについても把握しているという。このようなことからギャップが起きないように、食らいつくようにやっているという。

 仕事における失敗の経験についても語られた。名越氏いわく「勉強になるときは、失敗したときでしかない。うまくいったプロジェクトは自信が付いた以外に得たものの記憶がない」という。人よりもわりと失敗した経験は少ない方だと語った名越氏は、その理由として失敗することは絶対に嫌だという気持ち、同じ落とし穴に二度とはまらないという強い気持ちがそうさせているのだという。失敗することは自分だけではなく、ついてきたスタッフにも影響することもであり、本当に悔しいからだと強調した。ただ、失敗しないことを意識しすぎて冒険をしないことは面白いゲームが作れなくなるため、バランスが難しいとも語った。

 これに付随して、スマホゲームの開発はプロジェクトが比較的小規模で、試行錯誤やプロジェクトをたくさんこなせることが、経験や失敗により成長させることにつながるのであれば、それはとてもうらやましいとも語った。

 企業所属では作りたいゲームを作れないと質問した方に対しては「基本的に作りたいものは作れない」とひとこと。作りたいものと売れるものがあるとしたならば、迷わず売れるものを選べるのがプロだと語った。それを踏まえて、作りたいものと売れるものが重なっている、ほんのわずかな部分であったりチャンスを必死になって探してつかみ取ることが大事。それがやりたいことを探すことだとアドバイスを送った。加えて、その重なりを広げるのであれば、さまざまな経験を積んだり自分自身の興味の幅を広げていったりするのもひとつの手だと語った。

 最後に、クリエイターやチームをまとめるリーダー論についての話題となった。名越氏は龍が如くシリーズ立ち上げを振り返り、前述したヒットの要素となる、認知度の高いものとして“ヤクザ”をフィーチャーし、それをゲームで描くという誰もやってないことで勝算は持っていたものの、やはり周囲からは理解されなかったという。プレゼンにおいても2回落ちて、泣きの3度目でようやく通ったという。

 スタッフも懐疑的で「この仕事をやってていいのかわからない」「子どもに自慢できないゲームを作りたくない」と言われたこともあったという。そんななかでも、名越氏は、このシリーズを誇りにできる自信があったと振り返り「自分がブレてはいけない。それが当たり前だけど難しい」とコメント。それを踏まえ、自らを信じるまでスタートせず、スタートしたならブレないことだと語った。

 また、間違いがあったら1秒でも早く正す必要はあるとしつつも、不特定多数や最大公約数の意見に対して自分の信念を曲げてしまうと、まわりから何を考えているかがわからない人になってしまうという。名越氏は、怒るなら怒る、褒めるときは褒めるというようなわかりやすい人間になることがリーダーシップとして大事なのではと、このシリーズを通じて学んだと語った。

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