事件発覚後、楽天は、冒頭で触れた「意見窓口」を全商品ページに設置し、不適切な商品を報告できるようにした。また、二重価格表示を制御するシステムを開発、導入し、価格欄に表示される元値の種類を限定、不当な見せ方ができないよう対応した。
この制御システムは、全商品を毎日チェックし、条件に合致した場合のみ二重価格表示を可能にする仕組み。「海外を見ても、ここまでのシステムを導入しているサイトは他にないのでは」と河野氏は自信を見せる。
このシステムでは、メーカー希望小売価格の記載については「消費者庁のルール以上に厳しい設定をしている」(河野氏)。どのような根拠をもとに価格を設定しているのか、ユーザーがメーカーのカタログなどの資料を閲覧し、正しいことを確かめられる仕組みだ。店舗側は、根拠となる資料をアップロードしなければ価格を表示できない。
店舗側には、価格表示のルールを理解してもらうため、ガイドラインを策定し、啓発ビデオやガイドブックを配布しているという。
社内教育の見直しも図った。二重価格表示に関する社内勉強会を開いたり、楽天市場事業に関わる全社員を対象としたeラーニングを定期的に実施したりすることで、価格表示に関する正しい知識を身につけられる環境を整えた。
eラーニングの問題は20~30問で、全ての問いを間違えずに答えられるようになるまで、何度でもやり直す決まりだ。問題を作成したのは、消費者担当グループマネージャーの片岡康子氏。問題は消費者庁が公開している価格表示ガイドラインをもとに、弁護士や消費者庁の意見を取り入れながら作成しているという。
7月には、ブランド模倣品や海賊版の撲滅を目的として、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)と連携した。
海賊版の販売などが疑われる場合に、楽天が商品を調査購入し、CODAを通じて権利者が権利侵害の有無について鑑定する。これにより明らかな権利侵害が確認された場合には、楽天が出店規約に基づき、当該商品情報の削除を促すなどの措置を取るというものだ。調査購入は進めているそうだが、これまでに措置を講じた件数は明かしていない。
現在はユーザー向けの「ブランド模倣品補償」を試験運用している。ユーザーは、補償の対象となる55ブランドの商品を購入した際に模倣品だと疑われる場合、特設ページから申請。楽天による調査の結果、ショップが該当ブランドについて模倣品を販売していることが確認できた場合に、購入金額(クーポン使用分除く)の最大3倍の額が、現金で支払われるか、楽天スーパーポイントで付与される。9月30日までを予定しているが「何らかのかたちで継続していきたい」(河野氏)という。
最も新しいところでは、8月に店舗によるECコンサルタントの評価アンケートを始めた。社内で見える数字だけではなく、実際にやりとりをしている店舗の声を反映してECコンサルタントを評価するという。
「なにか事件が起きたときの社内調査では『ECコンサルタントはこう言った』『店舗側はこう言われた』と異なる意見が出る。そこを可視化し、ECコンサルタントの教育に活かしていきたい。これは今後の大きな戦略になる」(河野氏)。
(※テスト問題の解答は、1問目が「3」、2問目が「1」「2」「3」「4」、3問目が「2」「4」。)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境