KDDIは9月1日、三重県桑名市の協力のもと、家庭の電力データを利活用する「HEMS」(Home Energy Management System)のトライアルを2015年4月から実施することを発表した。約3500世帯のモニターの家庭にHEMSを導入し、電力の使用状況を可視化するほか、電力データをもとに広告やクーポンなども配信する予定だ。
経済産業省は、民間主導によるHEMSの普及促進や、電力データの利活用を推進する「大規模HEMS情報基盤整備事業」を展開する。NTT東日本、KDDI、ソフトバンクBB、パナソニックの4社を幹事とする計20社からなるコンソーシアムと連携して、全国約1万4000世帯のモニターに対してHEMSを導入し、各家庭の電力データを一元的にクラウド管理する情報基盤システムを構築する予定だ。
KDDIは、桑名市で約3500世帯のモニターの家庭にHEMSを導入する。専用のタブレット端末やHEMS機器を無償で設置し、電力の使用状況を可視化できるようにする。他の家庭の統計データと比較して、自分の家がどの程度節電できているかをアドバイスする仕組みなども用意する予定だという。
さらに、クラウド上の電力データを他の事業者に提供することで、消費者がさまざまな生活支援サービスを受けられるようにする。たとえば、テレビのデータ放送と連携させて、世帯ごとに最適化された情報や広告、クーポン情報を表示する。エアコンを使っている家庭のみにクーポン情報を配信し、来店を促すことで節電効果があるのかを測定する取り組みなども検討しているという。
ところで、電力データの提供にあたり懸念されるのが個人情報の取り扱いについてだ。KDDIでは消費者のプライバシーに配慮した形でHEMSデータを利活用できるようにするために、KDDI研究所が開発した個人情報の管理・制御システム「プライバシーポリシーマネージャ(PPM)」を活用する。利用規約を分かりやすく表示し、モニターが各自でどの情報を提供するかを選べるようにするという。
三重県は東日本大震災を機に、環境やエネルギー関連産業の育成や集積を目的とした「みえグリーンイノベーション構想」を掲げ、産学官の連携や交流を強めている。特に桑名市はエネルギー施策に積極的な地域となっている。大和ハウスとともに「先進的都市型スマート住宅供給事業」を進めており、陽だまりの丘地区において太陽光発電所を建設し、住宅に太陽光発電システムと家庭用リチウムイオン蓄電池、HEMSを導入する計画を発表している。
今回の実証実験では、この陽だまりの丘地区からHEMSの導入を進めるという。2013年9月下旬からモニターを募集し、2015年4月からトライアルを開始する。モニターの募集にあたっては、桑名市の協力のもと、広報誌への掲載や、自治会の回覧板、パンフレットの配布、また住民向けの説明会の開催などによって周知や理解を高めるとしている。また、あらゆる層での利用を促進するため、ゆくゆくはスマートフォンなどに馴染みのない高齢者などにも丁寧に説明し、モニターへの参加を求めていきたいという。
9月1日に三重県庁で開催された調印式に出席した三重県副知事の石垣英一氏は、三重県や桑名市の取り組みが評価され、同事業のパートナーに選ばれた喜びを語るとともに「何としても大成功させたい」と意気込みを語った。また、桑名市長の伊藤徳宇氏は、3500世帯を対象にした大規模な実験ついてはプレッシャーを感じるとしながらも、「陽だまりの丘地区という人口流入が多く、非常に意識が高い地域で実施することには意義がある」と語った。
KDDIでは桑名市のほかにも、静岡市の1000世帯、会津若松の500世帯にHEMSを導入する予定。将来的には、スマートメーターやエアコンなどHEMSから得られた電力データと、auユーザーの購買履歴やSNSの発言、位置情報などのデータを組み合わせることで、観光や福祉、教育など、エネルギー以外の分野も含めた新サービスの創出を目指すとしている。
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