もっとも、この基本プレイ無料の施策にビジネス的な面から懐疑的な声も少なくなかったという。特に多くの人がプレイしていても実際に収益になるかわからないといった、オペレーター側の懸念もあったと振り返った。
「ゲームセンターのビジネスはセガが新しいチャレンジをし続けた歴史があると思っています。プレイヤーが来店して、プレイをしてもお金を払わない可能性があるのは、いかがなものかという意見はありました。しかし、基本プレイ無料は、これまでのアーケードの既成概念を根底から覆すもので、閉塞感のある現アーケード市場を盛り上げるためには、是非試してみたいと思いました。もちろん、ビジネス的に未知数なところもありましたので、別タイトルの筐体を活用する安価なコンバージョンキットを用意するなど、オペレーターが導入しやすい環境はできるだけ作りました」(西山氏)
こうしてぷよクエACは2013年3月に発表、ロケテストを経て11月から稼働を開始。ふたを開けてみると、稼働から8カ月となる2014年7月には累計プレイヤー人数が500万人を達成。サテライト数は稼働初期から倍増したという。ちなみに硬貨投入の使い道については、約半数を超える割合でげんきの回復に使われているという。モバイルデバイスでのソーシャルゲームは一般的にガチャに使われる比率が極端に大きいとされるが、このあたりはゲームセンターがコインを投入する文化であることやゲームを遊ぶという明確な目的を持っていること、来店自体に手間がかかることなどが要因と西山氏は推察している。
「買い物袋を下げた主婦がゲームセンターにぷよクエACを遊びに来て、お金は払わなかった光景を見かけたことがありますが、それでもいいのではないかと思います。ゲームセンターという場所に足を運んでいただいて、楽しさを理解して頂き、家庭や近所の人との話題にしてくれれば、より多くの人がアーケードに足を運ぶであろうと。そういう光景が見られたことはひとつの狙いの結果としてよかったです」(西山氏)
一方で課題としてあげたのは、ピークの時間帯に多くのユーザーが集まりすぎて、せっかく来店したのにプレイする機会が持てないユーザーがいること。ゲームセンターはだいたい16時以降からピークを迎えるとされているが、それより前、特に平日の午前中や昼間といった時間帯でもプレイしてもらえる状況を生み出したいという。
「お金を使わないでプレイする方もいらっしゃるので、通常の硬貨投入式のゲームと同じぐらいの時間の長さでプレイした場合と比較すると、やはり収益性は少し劣るというのは仕方のないところです。しかしながら、ピークの時間帯に来店されても、ゲームをプレイできないユーザーも出てくるため、結果ピークの時間帯が分散されていき、稼働時間が延びるといった効果もあります。今後は、上手にピーク時間を分散させていくようなアクションを考えていきたいです。特に平日の昼間に遊べる主婦層やシニア層を取り込むことが出来れば、客層はグッと広がります。ですが今までのアーケードゲームの宣伝では、そういった層へのアプローチは難しいと思っています。ここも課題の1つですね」(西山氏)
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