電波環境協議会は、病院などの医療機関で携帯電話やスマートフォンを使用する際の新たな指針を公表。各医療機関がルールを設定する際に注意すべき事項を示した。これまで医療機関では、携帯電話の電波により医療機器が誤作動を起こす可能性があるとして、その使用を禁止するケースもあった。しかし、新たな指針では基本的に、携帯電話の使用を禁止しない。
指針では、病院などで携帯電話を使用する際には、医用電気機器から一定の離隔距離をとるよう求めている。医用電気機器の電磁両立性に関する国際規格などを参考に「1メートル程度」を目安にできるとし、各医療機関において試験などで安全性を確認している場合には、それよりも短い離隔距離を設定できると説明している。なお、体外式ペースメーカの使用者が付近にいる場合も、離隔距離を定める必要があるとしている。
各医療機関におけるルールは、待合室や廊下、病室などのエリアごとに定めるよう呼びかけている。そこには電波以外の観点も含まれており、それはたとえば、(1)マナーを考慮した使用制限を設けることが適切であること、(2)個人情報、医療情報の漏えいを防ぐため、録音・カメラ機能は控えられるのが適切であること、(3)携帯電話を使える場所が少ない場合は、利便性などを向上させるため、通話も可能な専用スペースを設けるのが望ましいことなど。
携帯電話事業者に対しては、この指針を踏まえ、医療機関における携帯電話の使用上の注意をウェブサイトや取扱説明書に記載し、利用者に周知することなどを求めている。
これまで、医療機関における携帯電話などの使用ルールは、医療機器の電磁的耐性(付近の電気機器などからの電磁波によって自身の動作が阻害されない能力)に関する薬事法に基づく規制や、マナーの問題などを勘案し、各医療機関が独自に定めてきた。しかし現在、携帯電話の浸透や医療機器の性能の向上など、状況が大きく変化している。
電波環境協議会では、医療機関における携帯電話などの無線通信機器の積極的活用は、医療の高度化・効率化や、患者の利便性・生活の質の向上に大きな効果が見込まれるため、安全を確保しつつ推進を図ることが非常に重要だとしている。
なお、1997年に不要電波問題対策協議会(電波環境協議会の旧称)が公表した「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」は廃止となる。
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