サムスンとアップルに切り込む中国メーカー--2014年下半期、スマホ業界をめぐる動き - (page 2)

2014年後半各社の動向は?

 これまでスマートフォン市場は先進国のハイエンド製品ばかりに注目が集まっていた。だが2014年は新興国を中心とした低価格な普及価格帯の製品の出荷台数が急増したことにより、それらの製品が無視できないだけの存在感を増している。ではこのようなトレンドの中、各スマートフォンメーカーは今後どのような戦略を取っていくのだろうか?シェア上位6社、そして台風の目となるかもしれないマイクロソフトの動向を探ってみた。

1.サムスン電子

サムスン第2四半期決算、減収減益
サムスン第2四半期決算、減収減益

 出荷数を落としたものの同社の製品は今でも世界中で人気だ。とはいえ最新モデルGALAXY S5の伸びが予想を下回っているのは、1年おきにフルモデルチェンジするという同社の戦略に消費者ニーズがマッチしていないことを意味する。大画面のNote 3は好調、また2013年のフラッグシップのGALAXY S4が今でも売れ続けていることを考えると、製品そのものではなくマーケティング戦略の見直しが急務だ。

 また低価格レンジの製品はライバルが急激に増えており、製品数の整理とブランディングの整備も必須だろう。「ハイエンド=GALAXY S」とは別の、低価格でクールな製品のブランドを早急に確立する必要がある。ちなみに中国各社は低価格品を新ブランドで展開し成果を収めている。

 圧倒的な製品数を誇るサムスン電子は、価格を下げればそれだけで出荷数を伸ばすことができる。もちろん利益減とブランド力低下を招くために単純な値下げは現実的ではなく、値下げや割引キャンペーンを行うとは考えにくい。製品そのものに問題はないだけに、思い切ったラインアップの改変も必要だ。

2.アップル

アップル、新「iPhone」を米国時間9月9日に発表か
アップル、新「iPhone」を米国時間9月9日に発表か

 この9月に発表予定の新型iPhoneの成功は発売前から約束されているようなものだ。先進国ではアップルストアへの行列など連日世間を大きく賑わすことだろう。第2四半期で伸び悩んだ出荷台数も今年下期には大きく回復し、サムスン電子に急追する可能性も十分高い。

 だが成長を続ける新興国向けの製品がないことから、先進国での需要が落ち着けば成長は鈍化してしまうだろう。先進国での買い替えだけに支えられるようになってしまえば、出荷数は景気にも大きく左右されてしまう。旧モデルを低価格で新興国向けに出す戦略も、今は他社の最新モデルにスペックと価格で競争できない。また新興国のデュアルSIM需要へもしばらくは対応しないだろう。なおサムスン電子やHTCはハイエンド製品でも新興国向けにデュアルSIMモデルを販売している。

 アジアを中心に人気が伸びている大画面モデルをどのタイミングで出すかも大きなポイントだ。数年前であれば「iPhoneが出るまで我慢する」消費者が多かったが、今や安くて十分使い物になる製品が多数販売されている。それだけに9月の新製品発表会の動向は大きな注目だ。

3.ファーウェイ

ファーウェイがSIMフリー市場に参入
ファーウェイがSIMフリー市場に参入

 通信事業者向けの相手先ブランドモデルから脱却し、現在は自社ブランドでスマートフォンを販売している。その戦略は当時無謀にも思えたものの、「Ascend」ブランドのファーウェイのスマートフォンは着々と販売数を伸ばしている。先進国ではまだ中低価格機が中心とはいえ、ハイエンド、スタイル、普及モデル、低価格機と4つに分けた製品ラインアップの展開は明快で分かりやすく、個々の製品の印象を消費者に植え付けることに成功している。

 低価格品はまだあか抜けない印象の製品が多いが、スタイルモデルのPシリーズをスペックアップし「おしゃれで高機能」という製品展開を強化。これまでの同社のどちらかといえば泥臭いイメージも少しずつ変わりつつある。だがデザインとスペックを強化すればするほど、サムスン電子やアップルとの競合も増してくるだけに、上位モデルの展開をどう行っていくかが気になるところだ。

 なお低価格品は中国で別ブランドの「Honor」で別の展開を開始。コストパフォーマンスに優れているだけではなくスタイリッシュな製品で、若者をターゲットにすることで販売数を急増させている。Honnorシリーズはアジア市場にも拡販を始めており、低価格なだけではなく所有欲をも満たせるデザインの良い製品としてどこまで販売数を伸ばせるかが注目だ。

4.レノボ

モトローラを買収したレノボ--アップルとサムスンに対抗するための2ブランド戦略
モトローラを買収したレノボ--アップルとサムスンに対抗するための2ブランド戦略

 ここ数年でシェアを大きく伸ばしているレノボだが、主力の中国市場では低価格なエントリーモデルの販売が好調な一方、ハイエンド製品は大手メーカーの後塵を拝している。2014年にはグローバル展開を意識したハイエンドシリーズ「Vibe」を発表するも、そのブランド名はほとんど認知されていない。PCも展開する大手IT製品メーカーにも関わらず、スマートフォンの欧米での展開は大きく遅れている。

 レノボの海外展開はグーグルから買収したモトローラを足掛かりに、レノボとのダブルブランドで進めていくだろう。両者の製品はターゲットユーザーも製品カテゴリもバッティングしておらず、相乗効果による先進国での拡販も期待できる。現在は準備段階であり、グローバル市場への攻勢は来年になるかもしれない。IBMからPC部門を買収し手に入れた「ThnkPad」のように、モトローラブランドをどのように活かしていくかが先進国、新興国両方でのシェア向上の鍵となるだろう。

5.シャオミ

Xiaomi、中国のスマホ市場でサムスン抜く--Canalys調査
Xiaomi、中国のスマホ市場でサムスン抜く--Canalys調査

 破竹の勢いでシェアを伸ばしているのが中国の新興メーカーのシャオミだ。ハイスペックながらも価格を抑えた上位モデルと、コストパフォーマンスに優れた低価格モデルを複数投入することでユーザー層も広げている。タブレットやウェアラブルデバイスも発表しており、今や「スマートフォン専業の小メーカー」の域を大きく超えている。

 シャオミは香港や台湾、シンガポールなど中国語圏への展開を行った後、アジア各国を中心に海外展開を本格的に開始。インド市場にもこの7月から参入した。中国国外ではブランド力がまだ低いことから価格を前面に押し出すとともに、限定数販売を行い大きな話題を打ち出すことで認知度を高めようとしている。

 だがすでにシャオミと同品質、同価格のスマートフォンは中国各社からも登場している。それらメーカーがシャオミ同様に各国で展開を行えば、中国メーカー同士の熾烈な競争が待っているのは目に見えている。シャオミは先に各国で製品展開をすることでブランド力を高め、ファンを増やすことで他社の追従を振り切ろうとする考えだ。そのため製品展開は先進国よりも新興国強化がしばらく続くだろう。

6.LGエレクトロニクス

Xiaomi、中国のスマホ市場でサムスン抜く--Canalys調査
「LG G2 mini」が月額2280円から

 韓国2大メーカーの戦いはサムスン電子が圧倒的優位に立ち、LGエレクトロニクスはシェアを落とす一方だった。だが2013年からハイエンドの「G」シリーズを頭に置いた製品展開の改革を実施。一球入魂ともいえるフラッグシップモデルの投入は同社のブランドイメージを回復させることに成功している。但しフラッグシップモデルの失敗は許されないという危うさがウィークポイントにもなりかねない。

 低価格およびミッドレンジモデルは「Lシリーズ」「Fシリーズ」に統一。デュアルSIMモデルやLTE対応モデルも用意し新興国を中心に展開を行っている。デュアルSIMモデルを加えると製品数は10以上もあり、予算や機能、見た目の好みによって製品を選べるのも特徴だ。シェアを大きく回復させるほどの力はまだないものの、新興メーカーに食らいついていくだけの力は十分に残っている。この秋冬はフラッグシップを補佐する特徴的な製品が発表されることだろう。

7.マイクロソフト

MSの音声アシスタント「Cortana」、「Siri」より優れている?
MSの音声アシスタント「Cortana」、「Siri」より優れている?

 ノキアの携帯電話部門を買収し、Windows Phoneメーカーとしてのスタートを切ったマイクロソフト。買収効果が明らかになるにはまだ数年がかかるだろうが、何よりも価格決定やマーケティングを自社単独で行えるようになったことは大きな利点だ。スマートフォンOSとしてのWindows Phoneのシェアはなかなか上がらないものの、低価格機を中心に新興国やヨーロッパの一部国では出荷台数を大きく伸ばしている。ソーシャルスマートフォンとしての使いやすさがじわじわと評価されている格好だ。

 今後も同社は低価格帯とミッドレンジ製品のモデルチェンジを進めることで新興国のみならず先進国のライトなスマートフォンユーザーを掴む戦略を続けていくだろう。9インチ以下製品のOSライセンス料を無料にしたことで、他社からも同じクラスのモデルが増えればWindows Phone全体のユーザー数増加も見込める。

サムスンとBarnes & Noble、「Galaxy Tab 4 NOOK」発表へ
サムスンとBarnes & Noble、「Galaxy Tab 4 NOOK」発表へ

 問題はハイエンドスマートフォンで後れを取っていることだろう。アップル、サムスン電子、HTC、ソニーモバイルなどがハイエンドスマートフォンで激しい争いをしている中へ割り込めるだけの製品がなくては、先進国でのシェア拡大は難しい。同社のタブレット「Surfaece」を6インチサイズにしてファブレットとして出す、くらいの思い切った戦略も必要かもしれない。マイクロソフトがスマートフォン市場で存在感を高めるためには、顔となるべき製品の確立が急務なのである。

 この秋冬は9月に発売予定の新型ファブレット「GALAXY Note4」やプレミアムモデルなども噂されている。サムスン電子の新興メーカーへの反撃の動きに期待したい。

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