またチケットストリートでは、チケットの購入価格などのマーケティングデータを興行主に提供している。これにより、ファンが「この席に払ってもいい」と思う金額を把握できるため、需要に応じて定価を変えられるほか、二次購入者の属性情報を分析してファンマーケティングにも活かせる。さらに、これまでは金券ショップやネットオークションでチケットが売買されても興行主には一銭も入ってこなかったが、チケットストリートでは公認の興行主に売上の一部を還元しているという。
実際にNBLが5月に開催した「NBL2013-2014プレーオフ」で、チケットストリートを公認マーケットプレイスにしたところ、以前と比べて二次流通に回るチケットの数が10~20倍に増えたのだという。「日本ではどんな理由でもチケットの転売は認められていなかった。公認になったことで、ちゃんとした流通チャネルなんだと認識してもらえるようになった」(西山氏)。
そして8月8日、世界最大級のオークションサイトを運営する米eBayと、eBay傘下でチケット売買事業を展開する米StubHubと提携したことを発表。これにあわせて、グリーベンチャーズが運営するファンドからも出資を受け、総額3億円の資金を調達した。「当初は情報交換のつもりだったが、日本のマーケット状況や弊社の取り組みを伝える中で、資本業務提携という形に収束していった」と西山氏は振り返る。
実は、チケットの二次流通において米国は日本よりかなり進んでおり、取扱い規模は年間数千億円規模に成長しているという。そのきっかけとなったのが、2007年にStubHubがメジャーリーグの公認のマーケットプレイスに選ばれたことだ。当初は5年契約だったが、2012年にさらに5年間の延長契約をした。「二次流通がビジネスの発展に貢献したことをメジャーリーグが認めた」(西山氏)。
また、メジャーリーグでは2012年以降に、対戦カードや天候などの需要と供給によってチケット価格を変動させる「ダイナミックプライジング」を導入した。実はこの“一次流通”の価格を決めるために活用されているのが二次流通でやりとりされているデータなのだという。この方式を導入したことで平均顧客単価が上がったことから、現在は8割の球団が採用しているそうだ。StubHubは現在、米国のチケット二次流通市場で過半数のシェアを占めており、MLB、AEG、ESPNなどの公認マーケットプレイスとなっている。
今回StubHubと提携し、日本における独占販売パートナー契約を結んだチケットストリートでは、MLBやNBAなど公認・非公認を問わずStubHubが取り扱うほぼすべての興行チケットを、日本から購入可能にするサービスを今秋に開始する予定だ。また、座席からの眺望やチケット価格をオンラインで比較しながら購入できる「3Dシートマップ」などのStubHubの技術を日本向けに導入し、チケットストリートのユーザーに提供する。さらに、eBayグループのPayPalが提供する決済プラットフォームも導入するという。
西山氏は「米国ではこの10年間で二次流通市場が急速に発展し、現在では一次市場の30~35%の規模があるが、日本では6%程度しかない。StubHubとの提携が実現したことで、日本のスポーツ、音楽、演劇などの興行ビジネス全体の成長に貢献していけると確信している。『ネットダフ屋』などのネガティブなイメージを脱し、健全な二次流通の市場を日本で拡げていくチャンス」と意気込んだ。
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