紙メディアは「ニュースアプリ」をどう見る--新聞、雑誌、作家が語る

井指啓吾 (編集部)2014年08月01日 08時00分

 Gunosy(グノシー)が7月30日に開催したメディア向けセミナーで、ニュースサイト「毎日新聞」編集長の乗峯滋人氏、文藝春秋のウェブ事業部長である田中裕士氏、作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏が、キュレーションメディアに対する印象や期待などを語った。

  • ニュースサイト「毎日新聞」編集長の乗峯滋人氏

 「Gunosyなどのキュレーションメディアにどのような印象を持っているか」との問いに対し、毎日新聞の乗峯氏は「新聞はキュレーションメディアだと思っていて、それは紙もデジタルも大した違いはない」と切り出し、「本来であれば我々がやらなければならなかったのではないか。(キュレーションメディアを)やりたかった、というのが率直な印象」と話した。

 文藝春秋の田中氏は、キュレーションメディアがユーザーとの接点を作っていることに触れ、「ありがたい」と率直な感想を述べた。「PCは雑誌のコンテンツ形態をそのまま載せやすかった。それがスマートフォンになると移行が難しい。スマートフォンユーザーをどうやって獲得するかで後手後手に回っているところに、さまざまなキュレーションメディアが声を掛けてくれて、ユーザーとの接点を作ってくれた。そういう意味ですごくありがたいと思っている」(田中氏)。

  • 文藝春秋 ウェブ事業部長の田中裕士氏

 ジャーナリストの佐々木氏は、今のメディア業界は「PCからスマートフォンへ」「ポータル・検索からソーシャルへ」という2つの大きな動きがあるとし、「おそらく10年に1度の変革期」と説明する。

 「いま起きている“キュレーションアプリ戦争”と言われているようなものは、PC時代にYahoo!ニュースが取っていたポジションを、スマートフォン時代には一体どこが取るのかという話。それはまたヤフーかもしれないし、有望だと言われているLINEかもしれない。GunosyやSmartNews、NewsPicksなども出てきたが、このゼロベースの戦いの中で、ガチッと(マスを)取ったところが次世代のニュース基盤になる可能性が極めて高い。そのため、この一連の市場動向を非常に興味深く見ている」(佐々木氏)。

次世代のニュース基盤も「公共の担い手」に

 佐々木氏は過去に、書籍「ヤフー・トピックスの作り方」の著者である奥村倫弘氏と、Yahoo!ニュースなどについて議論したことがあるという。奥村氏は、元ヤフーメディアサービスカンパニー編集本部長で、現在はニュースサイト「THE PAGE」を運営するヤフーの子会社ワードリーフの代表取締役社長を務めている。

  • 作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏

 佐々木氏によるとその議論中に奥村氏は、Yahoo!ニュースのような巨大メディアにはジレンマがあるとして「PVを上げることを目的としたニュースをトピックスに上げると、どうしても芸能ネタが中心になってしまう。しかしそれでは、これだけPVがあって多くのユーザーにリーチしているのに、こんなネタばかりを出していていいのかと罪悪感に駆られる」と話したという。なお奥村氏の著作によると、Yahoo!ニュースは2009年10月時点で45億PV、6970万UU。

 この話の後で佐々木氏は、この時期にキュレーションメディア市場を取った会社は“公共の担い手”として期待される時期が必ず来ると指摘した。「(ITの発展により)新聞の世論調査よりもずっと精緻なビッグデータ分析で、人々の声や世論をすくい上げることもおそらく可能になる。その中で、Gunosyなどのキュレーションメディアも巨大化するに従って、公共性をどのようにして政策やアジェンダの設定に結びつけるのかという非常に重要な設問が必ず出てくる。ここをぜひしっかりと考えてもらいたい。そうすれば、新しい民主主義の可能性も開けるのではないか」(佐々木氏)。

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