ソニー第1四半期、268億円の黒字--スマホ、販売台数減少で営業赤字

 ソニーは、2015年3月期の第1四半期(2014年4~6月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比5.8%増の1兆8099億円、営業利益は96.7%増の698億円、税引前利益は50.6%増の683億円、当期純利益は757.3%増の268億円とした。

 ソニー 代表執行役でエグゼクティブバイスプレジデント(EVP)兼最高財務責任者(CFO)の吉田憲一郎氏は、「為替影響を除くと売上高は前年同期比3%増になる。モバイル・コミュニケーションは損益が悪化し、営業赤字になった。一方で、ゲーム&ネットワークサービスは大きく増収となった」と総括した。

吉田憲一郎氏
ソニー 代表執行役 EVP兼CFO 吉田憲一郎氏

 だが、「エレクトロニクス事業は、過去3年間にわたって大幅な赤字を計上している。2012年度は7億円の赤字だが、資産売却を除けば、2398億円の赤字。2014年度第1四半期は68億円の黒字だが、ここには不動産売却による148億円が計上されており、それを除くと80億円の赤字。赤字構造は改善しているがまだ転換してはいない。構造改革は着実に実行する必要がある」との見解を示した。

 モバイル・コミュニケーションは、売上高は前年同期比10.1%増の3143億円、営業損失は153億円減の27億円の赤字となった。為替はプラスに作用したものの、スマートフォンの販売台数が減少したのが減益の要因。2014年度第1四半期の出荷台数は、前年同期の960万台が940万台に留まった。販路拡大や製品ラインアップ拡充のためのマーケティング費用が増加したことも減益要因となった。

 通期見通しでは、営業利益で260億円減のブレイクイーブンとし、「この減少分は、ゲーム&ネットワークサービスとデバイスの上方修正で埋める。モバイル・コミュニケーションは、7月から中期計画の見直しに着手している。これにより資産を減損する可能性もあり、全社業績への影響も見込む。国ごとに戦略を考え、通信事業者との強固な関係を築くことに力を注ぎ、利益を出せる事業基盤をつくる。規模ではなく、収益を重視した戦略とし、製品モデル数の削減にも着手していく」(吉田氏)

 スマートフォンの年間出荷計画を、年初の5000万台から4300万台へと修正。「出荷計画を下方修正したのは、見通しが甘かった点がある。私自身、予算策定のプロセスに十分に関与できていなかったところもあったが、その後軌道を修正して、事業部とお互いにベクトルをあわせている。新興国などで大幅な成長を期待していた普及価格帯のスマホの販売が下振れており、低価格モデルが収益を悪化している。ここも修正していく必要がある」とした。

 スマホを展開する国を絞り込むことや最上位モデルを年2回投入しているサイクルを見直すことを考えているという。

 吉田氏は「デジカメやゲームといった領域がスマホ事業にも流れており、モバイル・コミュニケーションは、ソニーが正面から取り組む事業である」と断言した。

 ゲーム&ネットワークサービスの売上高は前年同期比95.7%増の2575億円、営業利益は207億円増の43億円と黒字に転換した。

 「PlayStation 4」の販売が好調であること、「PlayStation Network(PSN)」で「PlayStation Plus」による課金を伴うネットワークサービスのユーザーが増加しているのが要因。PlayStation 4の購入者の半分がPlayStation Plusに加入しているという。

 「プレイステーション事業は数を追うステージにあり、1台でも多く売って、1人でも多くの人につかってもらう。ネットワークサービスについても、投資をするフェーズにある」と位置付けた。

 イメージング・プロダクツ&ソリューションの売上高は前年同期比9.0%減の1646億円、営業利益は83億円増の174億円。コンパクトデジカメの大幅な販売台数の減少が影響している。

 ホームエンタテインメント&サウンドの売上高は前年同期3.8%増の2857億円、営業利益は43億円増の77億円。そのうち、テレビ事業の売上高は前年同期比10.5%増の2050億円、営業利益は79億円となった。第1四半期の液晶テレビの出荷台数は360万台となり、前年同期の310万台を上回った。

 だが、2014年度通期のテレビの出荷台数は、50万台下方修正して1550万台としたほか、テレビ事業の通期売上高目標は、200億円下方修正し、8600億円とした。黒字化の計画には変更がない。

 吉田氏は、テレビ事業の分社化の狙いを改めて言及した。

 「コスト最適化、市場変化への柔軟な対応、経営の自立化と将来の選択肢を広げる狙いがある。テレビ事業で販売目標台数を下げたのは、むしろ、黒字化の確度を上げることにつながるものだと考えている。テレビ事業部にはストレッチした数字ではない数字をお願いしている。テレビ事業は、過去3年間で7900億円の累計赤字であり、黒字化の確信を語るには足らないが、今期は絶対に黒字化しなくてはならない」

 デバイスの売上高は前年同期比3.3%減の1841億円、営業利益は17億円増の125億円。映画の売上高は前年同期比22.6%増の1948億円、営業利益は41億円増の78億円と増収増益。音楽の売上高は前年同期比4.4%増の1169億円、営業利益は6億円増の114億円。金融では、売上高は前年同期比1.8%減の2470億円、営業利益は13億円減の438億円。その他事業では、売上高が33.8%減の1288億円、営業損失は15億円減の184億円の赤字となった。

 第1四半期の連結業績をみると、エレクトロニクス事業の回復に向けては、着実に歩は進めていているように見えるが、その道は、まだ半ばであるのは明らかだ。テレビ事業の黒字化も第1四半期の黒字化だけではまだ予断を許さない。

 吉田氏は「2014年度は構造改革をやり切る1年にするということは、ぶれずにやっていく。構造改革の優先度が高いのは、やはりAVを中心とするエレクトロニクス事業。これは、ピーク時の半分の売上高になっており、エレクトロニクス事業に関わる販売会社、本社機能を構造改革していく必要がある」と言及する。

 だが、その一方で、「設立趣意書にあるように、ユニークなものに対して投資していく体質を維持していきたい」と、攻めの意識も出始めている。

 業績回復を牽引し、それを次の成長につなげるには、構造改革よりも、強い商品力の方が近道であるのは明らか。そうした動きがもっと顕在化することに期待したい。

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