「MVNOが通信業界に与える影響は大きいのではないか」――KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、7月30日に開催された決算会見で、総務省が2015年よりSIMロック解除を義務化する方針を打ち出したことについてコメントした。
田中氏は、SIMロック解除についてはまだ具体的な内容が定まっていないことから、どのように対応するかは先行きを見ながら検討していくと説明。ただし、KDDIは3Gの通信方式がNTTドコモやソフトバンクモバイルと異なるため、仮にSIMロックが外れたとしても、主要携帯3社の契約数などにすぐに影響は出ないとの見方を示す。
むしろ、田中氏が注視しているのは近年急増するMVNOの存在だ。MVNOとは、携帯キャリアからモバイルネットワークを借りて独自のモバイル通信サービスを提供する事業者のことで、低価格のスマートフォンとSIMカードをセットにした“格安スマホ”などを販売し注目を集めている。
これまでキャリア各社は、2年契約などを前提として端末価格を割引き、月々の通信料でその代金を回収していた。しかし、SIMロック解除が義務化されると短期間で他キャリアへ乗り換えられてしまうリスクが高まるため、キャリアは端末の割引額を下げざるを得なくなる。もしそれで端末購入時の価格が大幅に上昇してしまうと、ユーザーが価格を重視してMVNOへと流れる可能性はある。
田中氏は、SIMロック解除がMVNO市場に与える影響については「読み切れない」としつつも、「短期的には影響がなくても流動する端末が増えてくるので、結果的にMVNOが使う端末として提供されるのではないかという見方もある」と語った。
なお、主要携帯3社の中では、NTTドコモのみ有料でSIMロック解除が可能となっている。NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏は、7月25日の決算会見で3年間で20万件のSIMロック解除に応じてきたことを明かし、今後も顧客のニーズに応えていくスタンスに変化はないと説明していた。
2015年3月期第1四半期(4~6月期)の連結業績は、売上高が前年同期比1.8%増の1兆205億5100万円、営業利益が同9.0%増の1947億9100万円、純利益が同66.5%増の1135億1400万円だった。田中氏は、2期連続の2桁成長に向けて順調な滑り出しと評価する。
春商戦が落ち着き販売台数が減少したことで端末販売収入も減少したが、データ通信料収入や海外子会社の収益が拡大した。また、前期にジュピターテレコム(J:COM)株式を追加取得し、段階取得による差損を計上したが、今期は損失がなかったため純利益が大幅に増加した。
純増数は約49万契約だが、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)の数は戦略的に「非公表」とした。解約率は過去最低水準の0.54%だ。ARPU(1契約あたりの平均売上高)も、約1070万ユーザーが契約する「auスマートパス」などの影響で拡大傾向にあるという。
今後は300万ユーザーを超えた電子マネーカードサービス「au WALLET」などを活用したオフラインでの増収も狙うほか、8月13日から提供する新料金プラン「カケホとデジラ」や「auスマートバリュー」による通信料収入の増加を目指す。さらに、ミャンマーの通信事業への参入や英国でのデータセンター事業の拡大により、海外戦略も加速していきたいとした。
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