ものづくりを加速させる「3Dプリンタ」

世界初3Dプリンタで造形された量産品ヘッドホン--高音質と光沢に挑む

加納恵 (編集部)2014年08月01日 07時45分
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 医療から食料まで、あらゆる分野で新しいものづくりを示している3Dプリンタだが、実際に量産品の製造に使用されているものもある。それがファイナルオーディオデザイン事務所が手がけるインナーイヤー型ヘッドホン「final audio design LAB I」(ファイナルオーディオデザインラボワン)だ。

 2月に全世界150台限定で販売されたLAB Iは、量産品として世界ではじめて3Dプリンタで造形されたモデルだ。3Dプリンタは接着や切削がいらない魅力的なものづくりができる一方、耐久性や精度などの面で不安視されていた。その3Dプリンタを用い、製品を完成まで導いたその過程をファイナルオーディオデザイン事務所の代表取締役である細尾満氏に聞いた。

“別モノ”と思っていた3Dプリンタを商品に使った理由

--LAB Iの発売から約5カ月が経過しましたが、販売状況はいかがですか。

 おかげさまで、先日最後のモデルが売れまして、150台完売となりました。海外で120台、日本国内では30台限定で販売しましたが、120台くらいまでは発売から1週間程度で売れてしまいました。

 今回は3Dプリンタを使って作る量産品はじめてのモデルということもあり、開発費がかかってしまい、16万円という高価なモデルになりましたが、次回からはもう少しコストダウンができると思います。

--なぜ、3Dプリンタで作ろうと思ったのですか。

  • 「final audio design LAB I」

 実は3Dプリンタを商品開発に使うのは、決して珍しいことではなくて、私たちにとっては当たり前のことなんです。実際5年以上前から筺体やパーツの試作品を作るのに使っていました。

  • 3Dプリンタで作成したパーツや筺体の試作品

 3Dプリンタと一言でいっても、樹脂造形や金属造形など、いろいろな方法があります。しかし、樹脂造形だと紫外線にあたると透明だった筺体の色がだんだん黄色く変色してしまったり、脆くなってしまったりと量産に使えるレベルではありません。試作品としては手軽に使えますが、製品にするにはまた別モノと考えていました。

 一方、金属造形は耐久面で問題はありませんが、仕上がりがとても粗く、見た目的な問題から製品として使うには難しいと判断していました。最初はどう扱っていいのかわからなかったというのが正直なところです。

 ただ使っているうちに、これで製品ができれば素晴らしいと感じるようになり、ならばチャレンジしてみようと思ったのがLAB I開発のきっかけです。

3社共同だからこそできた“キラリ”と光る光沢仕上げ

--3Dプリンタで作る魅力はどこですか。

  • ファイナルオーディオデザイン事務所の代表取締役である細尾満氏

 一体成型できることですね。通常の量産品では中のパーツを接着しないといけませんが、3Dプリンタならば一体構造で作れます。これによって構造がシンプルになり、ドライバの固定もしやすく、音がよくなります。 LAB Iではシンプルな構造を採用することで高音質化を実現しました。

 しかし高音質化できても、粗い外観や量産化の技術など課題は多かったです。私ども1社では解決できませんでしたから、独EOS製3Dプリンタの日本代理店を務めるNTTデータエンジニアリングシステムズ(NTTデータ)、金属加工技術などを支援するプロポックスの2社に全面的にご協力いただきました。

--それぞれの役割を教えて下さい。

  • 出力サンプル。パーツの左下についているのがサポート

 NTTデータには3Dプリンタで出力する際のプログラムを書いていただき、プロポックスには金属加工の面でご協力いただきました。

 3Dプリンタで出力する際、サポートといって積層していく形状を保つための支えが必要になるんです。完成時には取らなければいけないのですが、金属では取り去るのが難しく、残りをきれいに処理するのも大変なんです。そこで、サポートを少なくする方向でプログラムを組んでいただきました。またどの角度で出力していくと、最も精度が上がるか、表面の仕上がりが美しいかを研究しながら作っていただきました。

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