「9割の人はそんな無茶なと笑って聞き流すだろう。それでも1割、あるいは1%の人が本気でそれはやるべきだと思ってくれれば大成功だ」――ソフトバンクグループ代表の孫正義氏は7月15日、法人向けイベント「SoftBank World 2014」で、自身の考える日本の労働人口問題の解決策を語った。
日本では少子高齢化にともない労働人口が減少傾向にある。また、他のアジア諸国と比べて人件費も高い。こうした状況もあり、日本はGDP(国内総生産)で中国に抜かれ3位に転落したが、「負けて当然だと諦めている人がほとんどだ」と孫氏は指摘。続けて「日本の経済は成長しなくても仕方ないんだと自分を納得させてしまったら終わりだ」と語る。
しかし、現実問題として労働人口をすぐに増やすことは難しい。そこで孫氏が解決策として提案するのが「ロボット」だ。日本ではこれまで設定されたプログラムによって動作する単純生産ロボットを製造業の場で活用してきたが、今後はこれをクラウドAI(人工知能)で学習する汎用型生産ロボットに置き換え、一気に普及させるべきだと語る。
ソフトバンクも、2015年2月に人型の感情認識ロボット「Pepper(ペッパー)」を19万8000円という低価格で一般販売することを発表している。孫氏は「パーソナルコンピュータが、今ではなくてはならないものになったように、今度は“パーソナルロボット”の時代がくる」と語り、100年以内にすべての人々がロボットと働くようになると予測した。
その上で孫氏が掲げたのが、製造業人口の「1億人構想」だ。1日24時間働くロボットを8時間働く人間の“3人分”と考え、産業ロボットを3000万台導入すれば労働力は9000万人分に相当すると説明。現在、約1000万人いる日本の製造業の労働人口と合算すると1億人分になるというものだ。これにより、約7000万人いる中国を超える「世界最大の労働人口大国になる」(孫氏)とした。
また、ロボットを1体100万円と仮定して5年で減価償却した場合、平均月額賃金は日本が25万円、中国が7万円であるのに対し、ロボットは1万7000円で済むことから人件費の問題も解決できるのではないかと語った。
低迷が続く日本経済だが、孫氏はスマートデバイスやクラウドの企業導入による「生産性の向上」、そしてロボットの導入による「労働人口の増加」によって、「日本はもう一度競争力を取り戻せる」と強調した。
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