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その「引用」は許されるのか?講義やウェブでの資料配布は? - (page 2)

福井健策(弁護士・日本大学芸術学部 客員教授)2014年07月11日 11時00分
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 (4)関連性。主従関係の一種とも言えますが、自分の作品の内容に照らして、人の作品を引いてくるだけの「関連性」「必然性」は当然問われると思います。「好きだからこの写真載せたんだ。全体からすればわずかな分量だし明瞭区別もついてるし♪」という訳には恐らくいかないでしょう。引用の必然性がある程度は問われます。

 (5)改変は禁止。当然ですが、内容を変えて引用することは出来ません。この関連で、長文を引用する時に「要約」するケースがありますが、よほど正確にやらないといけません。筆者はむしろ、相手が長文なら(中略)をはさんで短くすることが多いですね。無論、それで文意が変わらないことが大切です。

 (6)出典明示。作品の出所は記載するルールになっており、これを「引用が許される条件だ」とする判決もあります。少なくとも作家名と作品名は入れましょう。出版社や所蔵美術館名なども入れれば丁寧です。

 ……慣れるまでは面倒くさいでしょう。しかし、だからといって人の作品を紹介したり批評する際、対象を引用することを避けていては、一番肝心な皆さんのレポートや作品のレベルが落ちかねません。コツをつかんで、是非「引用」を活用して下さい。

教育目的での利用(35条ほか)

 そのほか、学校での活動にとって大事な条文に「教育機関での複製」というものがあります。非営利の教育機関(小・中・高・大学など)では、授業の過程で必要がある場合に、他人の作品を複製して使うことを認めています。条件は教師や生徒が自ら複製することで、たとえば、文芸作品のコピーや映像・音楽などのダビングも、授業に必要な範囲なら配布可能です。いわゆるオンライン講義の場合、必要な資料を生徒に送信することも許されます(同時中継の場合のみですので、予習用などでの送信は出来ません)。

 ただし、自習ドリルのように「最初からユーザーが一定部数を買って学習に使うことを想定しているような著作物」では、この例外規定は使えません。つまりドリルを1冊だけ買ってきてコピーして生徒全員に配ることはできません。まあ、そりゃそうですよね。また、部数にも限度があるという意見もあり、50名程度のクラスなら良いが、数百名は入る大教室はダメ、などと言われます。筆者は、授業の過程で本当に必要な部分に絞るなら、大教室で配布しても良いという意見です。

 よく質問を受けるのは、学園祭やオープンキャンパスでの配布用にはコピーできるのか、です。これはその配布が授業の一環としておこなわれるか否かにも関わるでしょう。目的が学生の勧誘だったりサークルの発表などの場合、さすがに授業の一環とは言えないため、この規定は使えないのでしょう。

 なお、以上は許可が無くても作品を使える「制限規定」の話ですね。無論、許可をとればどんな作品でも教育の場で使えます。上記のように授業のためのコピー配布には条件があって、できない場合もありますから、大学が権利者の団体と連携してコピーの許可を一括で得ようという取り組みもあります。制限規定と並んで、大事な動きです。

 教育目的での利用ではこのほか、「教科書への掲載」「試験問題としての利用」などの例外規定があります。活発な教育や評論・表現活動のため、引用や教育目的での例外規定を正しく活用したいですね。

(続きは次回)

 レビューテスト(9):引用は文章については出来るが、図版や歌詞は許可なく引用できない。○か☓か。……よくある誤解ですが、正解はもちろん……本文を参照!

【第1回】著作物って何?--文章・映像・音楽・写真…まずイメージをつかもう
【第2回】著作物ではない情報(1)~ありふれた表現や、社会的事件も著作物?
【第3回】著作物ではない情報(2)~アイディア、短いフレーズ、洋服や自動車も著作物?
【第4回】著作権ってどんな権利?~著作権侵害だと何が起きるのか
【第5回】著作権を持つのは誰か ~バンドの曲は誰のもの?
【第6回】どこまで似れば盗作なのか ~だってウサギなんだから
【第7回】どこまで似れば盗作なのか(続)~だって廃墟なんだから
【第8回】個人で楽しむためのダビング・ダウンロードはどこまでOKか

福井 健策(ふくい けんさく)

弁護士(日本・ニューヨーク州)/日本大学芸術学部 客員教授

1991年 東京大学法学部卒。1993年 弁護士登録。米国コロンビア大学法学修士課程修了(セゾン文化財団スカラシップ)など経て、現在、骨董通り法律事務所 代表パートナー。

著書に「著作権とは何か」「著作権の世紀」(共に集英社新書)、「エンタテインメントと著作権」全4巻(編者、CRIC)、「契約の教科書」(文春新書)、「『ネットの自由』vs. 著作権」(光文社新書)ほか。

専門は著作権法・芸術文化法。クライアントには各ジャンルのクリエイター、出版社、プロダクション、音楽レーベル、劇団など多数。

国会図書館審議会・文化庁ほか委員、「本の未来基金」ほか理事、think C世話人、東京芸術大学兼任講師などを務める。Twitter: @fukuikensaku

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