この連載では、シンガポール在住のライターが東南アジア域内で注目を集めるスタートアップ企業を現地で取材。企業の姿を通して、東南アジアにおけるIT市場の今を伝える。
Facebookとは対照的に、特定のコミュニティに特化したクローズドなSNSが続々と生まれているが、中でも学校の先生と生徒をつなぐSNSは盛んな分野の一つである。海外では、SNSとしての機能も内包し学習管理システム(LMS)として世界一のシェアを誇る「Blackboard」や「Edmodo」、国内ではシードアクセラレータープログラムOpen Network Labにも参加した「ednity」が知られているだろうか。
そんな数あるサービスの中で、アジアで存在感を高めているのが「CLASSTING」だ。小学校の先生として4年間働いたこともある韓国人の起業家Hyungu Cho氏が2012年3月に韓国で公開したPC、スマートフォン向けのサービスで、これまでに日本とシンガポールに進出している。英語と韓国語に対応しているため、米国や英国、カナダ、オーストラリア、フィリピンなど英語圏の国でも利用されている。
CLASSTINGはその名前からも連想される通り、学校のクラスごとにコミュニティを作り、やりとりできる。ユーザー登録をして、自分の学校名とクラスを検索。もし該当するものがなければ自分で作成することも可能だ。クラスに加入したら、フィード上にノート(テキスト)や写真、ファイル、リンクなどを投稿できる。他の人の投稿に対しては“注目”の意味を表す「ライト・オン」ボタンや“お気に入り”の意味を表す「ハート」ボタンを押したり、コメントを付けて楽しむ。
より実用的な機能が「連絡帳」。主に先生が授業に必要な持参物や緊急のお知らせなどを書き込むためのもので、投稿されると生徒やその保護者のアプリやSMSに通知される。このほかにも遠足や運動会など校内イベントの様子を写した写真をアップロードし整理しておく「アルバム」機能や、先生と生徒が個別につながり会話できる「秘密相談」機能、フィードに投稿されたファイルだけを区別して保管しておく「クラスボックス」機能、他のクラスと姉妹関係を作って交流を図る「クラスting」機能など、提供される機能は盛り沢山だ。
Cho氏がこのサービスを開発したきっかけは、自身の先生としての体験が元になっている。非常に速いスピードで進化するウェブの技術についていけない先生と、それらを使いこなしているデジタルネイティブな生徒との間にジェネレーションギャップができてしまい、先生が生徒の考えていることや日頃の行動を理解できない状況が生まれていたそうだ。そこで同氏はFacebookやTwitter、Kakaostoryなどを使って、生徒やその保護者たちとコミュニケーションを図ろうと考えた。
しかし、それらのサービスは非常にオープンなつながりが形成される場であり、当然教育に役立てることを目的として作られたものではないため、思うような結果は得られなかったという。さらに困ったことに、先述のようなSNSで生徒やその保護者とつながりすぎてしまったがために、その後プライベートで全く使えなくなってしまったそうだ。さすがに自身の教え子やその親たちに素の自分を見せるのは気が引けるし、先生としての威厳が損なわれる可能性が高いことは容易に想像できる。
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