--そうした考え方を普段の仕事の流れにどのように生かしているか。
デザインのアウトプットとして3Dのデータ作るのが基本的なスタイルですが、私の場合はそれが早いフェーズから始まります。簡単なスケッチをたくさん描いてクライアントと十分にコミュニケーションをしたのちに、3Dデータ化します。綺麗な二次元の絵を描くのも嫌いではないし、ときにはやります。でも、ある程度アイデアが固まってきたら早く3Dにして検証したいと思います。最近はそういう流れが多くなっていますね。
また、3Dデータにする前のプロセスも大事です。つまり、顧客や一緒にモノ作りをするパートナー、チームとどれだけ夢や理想を共有できるかということです。
具体的には、打ち合わせの場所で落書きのような絵をたくさん描いて、その場でアイデアをどんどん煮詰めていきます。自分の仕事場に戻ってから、3Dデータ化など、プロとしての作業をやります。以前、AfternoonTeaのランチボックスをデザインしましたが、アイデアスケッチをたくさん描いた次の打合せには3DデータをCG化したものを持って行きました。その後、サイズなどの調整はありましたが、ほぼ完成形でした。
--3Dプリンタをどのように利用しているか。
3Dデータを基軸に仕事をしているため、3Dプリンタだけでなく、切削など数値制御(NC)系の加工へのステップはスムーズです。3Dデータ化の根本的な意味は「夢と現実の架け橋を作ること」です。2Dではイメージをふくらませて自由に描くことができ、それがよいところでもあります。しかし、たとえば自動車であれば、実際には人が乗りますし、エンジンも載ります。2Dの絵を現実世界にどう着地させるかという過程で、3Dで立体化できることの意味は大きいのです。設計や製造といった後工程まで見据えて、自分で一通り検証できるので、デザイナーは責任と確証を持って次のステップに行くことができます。トヨタ自動車に在籍していた1995年頃から「デザイナーも自ら3Dデータを作るべき」と考えていました。
3Dプリンタは、こうしたメリットをさらに発展させたものといえます。今まで画面の中だけで完結していたものを、触れられるオブジェクトにすることが可能になりました。コミュニケーション手段が1つ増えたとも言えます。流れとしては急に出て来たものではないですが、低価格化などによって一般の人でも扱えるものになってきました。
3Dプリンタで作成したものを実際に現場に持って行くと、より多くの人に深く理解してもらえたり、納得してもらえたりします。画面上で見せても伝わりにくいことでも、触れるものがあると理解が深まるためです。現状では模型に近い形で使っていますが、今は金属素材用の3Dプリンタなど、いろいろな手法が開発されています。そうすると、自動車のような分野でも、本当に試作品や製品として使えるものが出力できるようになるでしょう。
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