2005年にznug design(ツナグデザイン)を設立した根津孝太氏。自動車をはじめとする工業製品のコンセプト企画とデザインを手がけ、その範囲は、電動バイク「zecOO」、軽オープンスポーツカー「コペン」、トヨタのコンセプトカー「Camatte」などの自動車から、ミニ四駆、AfternoonTeaのランチボックスに至るまで幅広い。経営者兼デザイナーとして活躍する根津氏に話を聞いた。
--新型のダイハツ「コペン」のデザインはどのように生まれたのか。
今回のコペンは「ボディの着せ替えができる」ことでも注目を集めています。ボデイの着せ替えとは、外板のパネルを変えることでクルマのデザインを変えることです。着せ替えというアイデアは、コペンの開発チームがもともと持っていたものです。その価値を社内や顧客に上手にコミュニケーションしたいということで、トヨタのコンセプトカー「Camatte(カマッテ)」の企画を担当したこともあり、お手伝いすることになりました。社内で着せ替えに懐疑的な方の多くは、コペンは小さくても本格的なスポーツカーであり、着せ替えは機能として本流ではない、といった意見でした。
彼らはオープンスポーツカーである先代コペンが大好きだったんですね。それは大事なことであり、守っていくべきことです。では、着せ替えという機能を付けることで(大事なものを)何かを失うのかというと、それは全く逆で、むしろ1番のポイントなのだと考えました。スポーツカーとして性能を上げるために高剛性のシャーシを作る。軽量化するためにボディに樹脂を使う。その結果、副産物として着せ替えが可能になったということなのです。本格的なスポーツカーとしての性能を極めた結果、副産物として着せ替えが実現したというのは、すごくおもしろいことです。これを使わない手はありません。
まず、スポーツカーは、現代では自動車に対して造詣の深い一部の人にしかコミュニケーションワードとして機能しないのではないかと疑問を投げかけました。“走りのよさや乗る楽しさという素晴らしい価値を持っているのに、それが一部の人にしか伝わらなかったとすると非常にもったいない、価値が伝わる工夫をしよう”という話をしました。
そこで「着せ替え」を価値のコアに到達するための1つのバイパスとして考えたらよいのではないかと提案しました。スマホだってケースを着せ替えしますよね。東京モーターショーでは、これまであまりスポーツカーに興味のなかった女性や若年層に「これなら欲しい」という反応ももらえました。
人によっては着せ替えできることが最初の購入理由になるかもしれません。でもお気に入りの愛車に乗っているうちに、その内にコアとなる価値の「走りの良さ」に気づくかもしれません。いずれにしても商品のコアになる価値がある場合、それにリーチする方法はひとつに絞らなくてもいい。複数あっていいわけです。価値の高いコアに出会ったとき、それを世の中とどうコミュニケーションさせるのかがデザインの本質です。
コペンは模型の「ミニ四駆」へも展開していますが、単なる賑やかしではありません。「買ってからが楽しい」という商品の根本の思想が共通しているからこそ、ミニ四駆にする意味があると考えています。
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