シンガポール大手通信キャリアがクラウドファンディング--その狙いと強みとは

 日本では、NTTドコモやKDDIなど大手通信キャリアがファンドを運用し、設立してまもないスタートアップ企業を支援する動きが見られるが、同様の動きがシンガポールにおいても広がっている。

 業界2番手のStarHub(スターハブ)は、ファンドとは異なる形で企業を支援している。通信キャリアが独自に構築したものとしては世界初となるクラウドファンディングサイト「Crowdtivate」を4月にベータ版として公開。アジアを拠点とする起業家やアーティストと彼らを支援したい消費者をマッチングさせるもので、現在は近日中に資金援助の呼びかけを開始するプロジェクトを掲載している。

 クラウドファンディングサイトの立ち上げという通信キャリアとしては非常に珍しいこの動きの背景や展望について、サイトを運営するStarHubのチームStarHub i3のヘッドであるStephen Lee氏に話を聞いた。


「Crowdtivate」

――通信キャリアがクラウドファンディングサイトを立ち上げる狙いは。

 クラウドファンディングサイトは、イノベーションを起こすクリエイティブなアイデアを、スタートアップ企業や起業家に限らず、一般消費者からも継続的に収集できる場です。私たちはアジアで最高のアイデアをキュレーションし、その発案者たちがアイデアに惹かれる人たちからの支援を広く募れるプラットフォームを作りたいと考えています。そしてそれらのアイデアが伝統的な情報通信サービスを超越したビジネスに育っていくことを通信キャリアとしては長期的な視点で期待しています。

――短期的な視点で新たな収益源として見込んではいないのでしょうか。


Stephen Lee氏

 Crowdtivateは資金調達に成功したプロジェクトが集めた資金の4%をプロジェクトオーナーにチャージします。この4%という比率はマーケットにおいて最も低く設定されています。ちなみに、このサイトでは個人から資金を募るだけでなく、スポンサー企業からの支援も募る予定です。

 その他の収益源として、このサイトを運用するほかに、プロジェクトオーナーにメンターシップのオプションサービスを提供します。プロジェクトの認知度を高めるためのキャンペーンの実施や、アジア域内での国境を超えたビジネスの拡大、商品・サービスのテストユーザーへのアクセス、ソフトウェア開発、インフラ面での支援などをします。

――既存のサイトとは一線を画すCrowdtivateの起業家にとっての魅力は。

 まず1つは、Crowdtivateでアイデアを公開したプロジェクトオーナーは、弊社の基盤を使ってサービスを成長させられることです。そして2つめは先ほど述べましたが、StarHub i3がこれまでにも尽力してきたアクセラレーションプログラムやビジネスメンターシップで培ったものを活かして、クラウドファンディングサイトで資金調達に成功したアイデアを存続可能なビジネスに転換していく支援が可能なことです。このことが、資金調達が完了したらアイデアの発案者と支援者の関係が終わってしまう他のサイトとの大きな違いといえるでしょう。

――ベータ版公開からこれまでの反響は。

 4月9日に公開して以来、サイトにプロジェクトを投稿したい人からの会員登録がすでに数百もの規模でありました。現在サイトに掲載しているものがその一部です。私たちの次なるステップは、このサイトに関するクチコミを起業家やパブリックに対して広げ、量よりも質にこだわり良いプロジェクトを集めること。そして、このサイトに興味を示すアジア各国の通信キャリアなどと連携し、このプラットフォームを拡大していきます。

 シンガポールでは、通信キャリア最大手のSingTel (シングテル)が小会社のInnov8を通じて2億シンガポールドル規模のファンドを運用し、さまざまな国籍の企業に出資する動きもあります。また、出資先のビデオストリーミングサービス「Viki」が楽天に買収されるなど、成果を残し始めています。

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