米国の大手クチコミサイト「Yelp」が4月9日、日本でのサービスを開始した。ユーザーはアカウントを作成して、各地のローカルビジネスについてレビューを共有できる。これにあわせて、iPhoneとAndroidに対応した無料アプリが公開され、ビジネスオーナー専用の無料ツールも利用可能となった。
日本では「食べログ」を始めとする強力なライバルがいるが、果たしてYelpは普及するのだろうか。それを占う上で試金石となるのが、アジアで日本に先んじてサービスを提供しているシンガポールである。日本はシンガポールに続く2カ国目のアジア進出国で、世界では26カ国目となる。
そこで今回は、Yelpの広報担当とシンガポールで暮らす筆者の知人(シンガポール人)に、同国におけるYelpの状況について話を聞いた。
Yelpは2012年9月にシンガポールでサービスを開始した。アジア展開の起点として同国が選ばれた理由は、1人あたりのGDPが大きく、新しい技術に精通しており、また英語が公用語で、さまざまな国の文化や食事が集まる“るつぼ”だったからだという。
同社は国ごとのユーザー数を明かしていないが、世界全体では2013年第4半期に1カ月あたり1億2000万ユニークユーザー。あらゆる業種のビジネスが無料で掲載されており、新店舗の開店や閉店を経ながらコンスタントに情報を収集し、進化し続けているとのことだ。
Yelpの広報担当によれば、Yelpers(Yelpのユーザーのこと)はこのサービスを、ライフスタイルをテーマにしたブログのように使っているそうだ。近所のクリーニング屋から喫茶店まで、訪れた場所、食べた料理、旅行の過程などの日々の感想をレビューとして書き記している。
また、そうした自分の過去の行動を思い出すためだけでなく、自分が体験したことをパブリックな場で共有することで、近所で暮らす人々や、ローカルのビジネスを支援することにも喜びを感じているという。
シンガポールで暮らす数人の知人に話を聞いてみた。もちろんこれらの話が同国で暮らす、すべての人に当てはまるわけではないことを先に断っておく。
Yelpをそもそも知っているかを聞いたところ、その反応は大きく3つに分かれた。1つは「あらゆるお店のクチコミサイトとして知っている」というもの。2つめは「レストランのクチコミサイトとして知っている」というもの。そしてもう1つは「知らなかった」というものだ。
Yelpがレストラン以外のクチコミも提供していることに関する認知は、今ひとつ進んでいない印象を受けた。もしくは、レストラン以外のお店に関するクチコミをウェブで検索するという行為自体がシンガポールでは浸透していないのかもしれない。
認知している人の利用頻度は「ときどき使う」「まったく使わない」というものが多かった。その理由は、「お店を探すときはグーグルで検索してレビューを読む」「レストランを探すときには(Yelpの競合にあたる)Hungrygowhereや8 DAYS Eatを使う」といったものだった。
ちなみに、「Hungrygowhere」と「8 DAYS Eat」はどちらもシンガポールの現地企業が運営するウェブサービスで、特に前者の知名度は高い。また最近では、スタートアップ企業が開発した「Burpple」などソーシャルメディアと連携したレストランのクチコミに特化したアプリなども登場している。米国から進出してきたYelpだが、これまでのところ現地にある既存サービスの牙城の切り崩しには苦戦しているようだ。
こうしたローカルサービスに対する優位性についてYelpの広報担当者は、お店の業種を問わず、世界26カ国にまたがる15カ国語、5700万件のクチコミを集めていることが強みだと話す。確かに海外に旅行したり、海外で暮らすユーザーにとって、それは大きなメリットかもしれない。しかし、Yelpが現地で暮らすユーザーに利用され、各国で普及していくためには、より一層のサービスのローカライズが求められそうだ。それは日本も例外ではないだろう。
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