モノづくりに対して近年注目が集まっているが、こうした状況を岩佐氏は「ハードウェアはこの数年が攻め時」だと指摘し、複合的な要因によりこの数年は、大きな波を作り出していると語る。
「ユーザーは、メーカーに関係なく良いプロダクトを選ぶようになってきた。また大手メディアもベンチャーのプロダクトに注目してきている。資金面においても、日本でも近年注目されているクラウドファンディングが一般的に定着してきたことは大きく、事前に需要見込みやPRをすることができる。最後は流通の変化だ。ベンチャーのプロダクトであっても、ニッチなニーズを満たすプロダクトであればビジネスできると多くの代理店が認知し始めたことは大きい」(岩佐氏)
こうした経験から、Cerevoでは世界中の代理店から問合せが来るとし、すでに23カ所の国でLiveShellが販売されており、売上の45%は海外だという。2014年は資本構成を変更し、従業員数も13人から50人へと引き上げる。体制を4倍に強化することで、モノづくりを一気に加速させる構えだ。「2014年に攻めなければいつ攻めるんだ」と岩佐氏は現状を捉えている。
以前、大手自動車メーカーに勤めていた高萩氏と大手家電メーカーに勤めていた岩佐氏。両者ともに大手メーカーはソフトウェアへの意識がまだ低いと語り、これからはハードウェア1本ではなく、ソフトウェアに力をいれていく必要があるという。
「スマートフォンの進化によって、ほとんどがソフトウェアでできるようになった。CPUをハードウェアに積むよりもデータをクラウドで処理し、スマートフォンで動作したほうがユーザーにとっても楽だし利便性が高い。モノ作りの考え方を変えなければならない」(高萩氏)
ただモノを売って終わりのビジネスではなく、ソフトウェアと連動することによってハードウェアの可能性は大きく広がると両者は語る。岩佐氏は「アプリは機能追加も楽。さらにアプリをアップデートすることで、ハードウェアの商品寿命を伸ばすことができる。従来とはビジネスモデルが違う」と指摘。
高萩氏も「一度ハードウェアを買ってもらったユーザーに対して、アフターサービスなど複数の接点ができ、ソフトウェア側でいくつものビジネスチャンスを作ることができる」と語り、カスタマーサポートに加え新たなビジネスへの事業展開につながる可能性も高いという。
「今はソフトウェア重視の組織体制に移行している。もちろん、ハードウェアに力を入れることも大切だが、チップやモジュールなど高機能なものが出回っており、かつてに比べるとハードウェアに力をいれる要素が減ってきている」(岩佐氏)
ハードウェアで忘れてはいけないのは、プロダクトデザインだ。どこまで意匠をこだわるかはプロダクト内容や予算にも関わってくる。岩佐氏は、従来の“こうあるべき”といった固定概念から脱却することで新しい発想が生まれるという。
「ウェアラブルカメラの『GoPro』がなぜあれだけ注目されるか。それは、液晶を捨てて頭に装着するというデザインが、ユーザーの心を掴んだから。常識を覆すことで、価格破壊なプロダクトやこれまでにない新しい企画を生み出すことができる」(岩佐氏)
高萩氏は「おもちゃという市場を選んだ時から、おもちゃとして買ってもらえる予算の範囲の中でプロダクトを作ろうと決めた。プロダクトデザインも重要だが、Moffはメカ勝負だと考え、まずは中の機構やメカ設計、商品企画を重視した」と語り、意匠と部品の関係をどこに位置づけるか、プロダクトにおける優先順位によって考えなければならないという。
プロダクトの値付けに関しても、ある程度の競合や市場における値段感を意識しつつも、値段の高低にそこまでこだわる必要性はないと両者は語る。
「高いからこそ売れることもある。プロダクトの企画が良ければユーザーは価値を見出してくれる。ベンチャーは大手の安価な大量生産とは違い、少量で利益率の高いプロダクトで勝負しないといけない。だからこそ優先順位を間違えず、何を企画の肝にするかを考えることが大事」(高萩氏)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」