SpaceXによる有人宇宙船「Dragon V2」の展望--元宇宙飛行士C・ハドフィールド氏に聞く - (page 2)

Daniel Terdiman (CNET News) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子2014年06月10日 07時45分

−−NASAはISSのミッションを遂行するうえで、ある意味においてロシアに依存しているのは明らかです。現在のNASAとロシアの関係をひと言で述べるとどのようなものになるでしょうか?

 両者の関係は米国とロシアという二国関係のごく一部でしかありませんし、NASAが関係の主導権を握っているわけでもありません。ロシアがウクライナでやったことは受け入れ難く、支持できない行動だと世界中のすべての国々が判断しています。NASAとロシアの関係を正しく伝えるものは、今週の始めにNASAの宇宙飛行士と欧州宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士、ロシアの宇宙飛行士がともに宇宙船に搭乗したというニュースでしょう。彼らはISSでの共同任務を遂行するために何年も一緒に訓練を積んできたのです。

 米国はロシアの協力無しにISSへの到達手段を確保できませんし、ロシアも米国の協力無しにISSにまでたどり着けないのです。これは素晴らしい協力関係です。ISSの歴史を振り返ってみるとその間に、ソビエト連邦の崩壊や、1998年のルーブル下落、それに伴うロシアからの海外資本の流出、コロンビア号空中分解事故といった大変な出来事があったことを考えると、この国際協力が無ければわれわれは完全にお手上げ状態になっていたと分かるはずです。1カ月間の出来事でものごとを見るのは簡単ですが、それは宇宙船の開発や宇宙探査と直接つながらないのです。

−−ISSへの飛行にロシアのソユーズが必要となるという力関係は、SpaceXによってどう変わっていくのでしょうか?

 どのような場合でも、選択肢があるのは良いことです。家庭に車が1台しかない場合、それが故障するだけで困った状況に陥ります。また人というものは、競争があれば当然ながらそれに対応しようとします。何かを独占している場合と、他者との競合にさらされている場合とでは、態度や振る舞いに違いが出てくるはずです。SpaceXに関しては数多くの刺激があります。彼らはものごとを非常にうまくやってのける頭の良い人たちです。また、彼らは米国政府の主要な取引先でもあります。彼らの予算の多くはBoeingやLockheed Martinなどの場合と同様に、米国政府との契約からとなっているのです。しかし、彼らは数多くの独自開発も行っています。というのも彼らのトップに立っているのは、自らの才能で巨万の富を築き上げたMusk氏なのです。つまり同氏には、従来の航空宇宙企業の多くでは株主たちがいる故に行っていない、あるいは行う予定がない、またはできないものごとを追求できる自由があるのです。Musk氏はHoward Hughes氏やJack Northrop氏とよく似ています。同氏はビジョンを持ち、ものごとをやり遂げるための作業倫理を持ち合わせている天才的なエンジニア兼ビジネスマンなのです。Musk氏はこの分野に参入し、10年ちょっとで驚くほどの成果を上げました。SpaceXは既にDragon無人宇宙船を使ったISSまでの飛行を4回成功させています。これは本当に素晴らしいことです。

 このため、彼らが昨日見せてくれたものについて、私は楽観視しています。彼らは船体の外殻を設計し、着陸時にパラシュートと予備パラシュートを使用せずに済むよう、スラスターを用いる方法を考え出しました。これは画期的なものです。さまざまな人たちが何年にもわたって考え出そうとしてきたが、誰も実現できなかったのですから。また、ISSに飛行できる米国発の宇宙船が生まれるというのは本当に心躍ることです。

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