新たなコンテンツ創出の場を目指して--東映アニメがスマホゲームに乗り出す理由 - (page 2)

 昨今のスマホゲームは、世界観がファンタジーものに傾倒しているように見えます。ただ、僕らが切り出すにあたって少し違う切り口でアプローチをしたいと考えたんです。アニメや映画で人気のある作品をリサーチしてみて、もちろんハリーポッターのようなファンタジーものの人気は高いのですけれど、一方でたとえば「タイタニック」や「ジュラシックパーク」のような、混乱が巻き起こるような作品が意外と上位を占めていて評価が高いのです。

 さらに2013年あたりはゾンビを扱った作品が海外で人気を得ていたんです。ゲームでは「The Last of Us」、映画では「ワールド・ウォー Z」などですね。パニックものや感染者ものがたくさん出てきていて、世界的にも人気が獲得できうるものであろうと。この先の展開を考えるなかで、最初から世界進出を標ぼうするつもりではありませんが、かといって日本限定とすることもないですから。世界にも出していける世界観を考えるなら、パニックものというのは、世界でも受け入れられるのかなと思います。

 とはいえゾンビを前面に押し出すのは、日本において一定の人気はありますけど好みがハッキリとわかれるジャンルかと思います。俗に“グロい”というような目を背ける描写は日本で受け入れにくいところがありますし、全年齢に支持される世界観を検討した結果、今回の世界観なりキャラクターを仕上げていきました。

--制作にあたっての苦労点はありますか。

 世界観やキャラクターの案は基本的に弊社で考えましたが、ゲーム制作においてどこまで必要とされるものなのかがわからなかったので、アニメ的な手法でこちらで案を作って、開発会社とすりあわせていった感じです。ゲームシステムなどは開発を進めていくなかで変容していったところもあります。あくまでゲーム性が重視されるべきで、キャラクターやシナリオでガチガチに固めても逆に面白みを感じなくなる部分もありますので、そこは柔軟に対応しました。

  • スクリーンショット

--キャラクターに関する資料がかなり厚いのですけど、どのぐらい用意しているのですか。

 最初から一度に全員出すわけではないのですけど、200人分は用意しています。アニメではだいたい十数人という範囲でおさまりますから、これだけの人数を用意するということも未知のことでした。当初人数を絞ってストーリーを見せていくアニメ的な考え方でいたところもあったのですが、開発会社とも相談して変えていきました。人数を多くしたほうがより世界観を表現できるし面白さも出せるだろうと。

  • 登場キャラクター(一部)

 初期のカードバトル型のソーシャルゲームが全盛のとき、きれいなキャラクターとイラストがあるのに、ゲーム内のカードというだけにとどまっているのはどうなのかなと思っていたんです。もう少しキャラクターらしさ、人間らしさを出してあげたいと思っていました。なのでカードゲームにはしていませんし、どのキャラクターも好きになってもらえる可能性を持たせたかったので、表に出さないであろう細かい設定まで全員に作っています。イラストもアニメらしいと言いますか、今にも動きそうな感じにしたいとは思っていました。作家の方にも、イラストを描くのではなく、キャラクターを作るつもりでお願いしたところがあります。

 設定の作り方などは作業的に無駄なところもあったのかもしれませんけど、弊社らしいこだわりを持って望めたのかなと思います。

--そのこだわりというのは。

 たとえば弊社はアニメーション制作会社ですので、IT系企業のような革新的とかスタイリッシュなことをイメージされる方は少ないのかなと。

--いろいろなアニメ会社がありますけど、東映アニメなら「昔ながら」とか「老舗」というフレーズがイメージされます。

 もちろん技術的にもビジネスとしても新しいことに挑んでいますが、なによりクリエイティブに関して、作品が好きでプライドを持ってやっている会社だと思うんです。作り上げて動いているキャラクターを愛してほしいですし、作った作品を好きになってもらいたいという気持ちが根底に根付いた会社だと。それで何十年もやってこれたのですから、なおのことそう思います。

 私自身は、ゲームはもっとエモーショナルなものであるはずだと思っていて、マネタイズも必要ですが、気持ちを動かさないと作品としてだめだと思ってます。ゲームが好きな方々が納得してくれるような、スマートフォンでも面白いゲームができる流れになってほしいし、そのひとつでありたいと思って取り組んでいます。

--スマホゲームの市場も競争が激しいですが、そのなかで勝算となるものはあるのでしょうか。

 会社として培っているライセンスビジネスなどのノウハウがありますから、展開のバリエーションも違いが出せると思っています。また、切り口が違っていて見ているゴールも違うかなと思っています。昨今ではスマホゲームでヒットするとものすごく利益が上がるみたいな事例もありますけど、マネタイズそのものが目的ではないんです。

 やはり次の展開を生み出すことのほうが目的であり重視していることです。今後も新しいキャラクターはもちろん世界観、そして作品が社内からたくさん出てきてほしいし、それをみなさんに伝えられるプラットフォームになりうるものを作るのが目的です。だからこそあえて完全オリジナルのタイトルで挑むわけですから、次につながっていくことが気持ち的な成功でひとつのゴールかなと考えています。

 ゲームを作ろうと考えているという話は、ゲーム業界ではないアニメ制作などのコンテンツを持っている身近な会社さんからも、最近はよく聞かれます。やはり同じようなことを考えているのではと思いますし、気持ち的にも追い風が吹いてきているのかなと。これが正解という取り組みではありませんし、結論がない試みでもあります。周りからはアニメ化まで進めば成功になるのかもしれませんが、それがゴールと決めつけたくはないので。ただ、まわりでそう考えている方に向けても、こういうアプローチで展開できるひとつの事例になればと思います。それが結果的にゲームでもアニメでも、両方の業界の盛り上げまでつながることになればと考えています。

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