東京都は6月3日、2020年の東京五輪を見据えた、携帯電話とWi-Fiの接続環境改善に向けたヒアリングを実施。主要携帯キャリア各社やWi-Fiの推進団体などから、東京五輪開催にあたっての課題やその解決に向けた要望などを、東京都知事の舛添要一氏らが聞いた。
ヒアリングに参加したのは、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI、そして無線LANビジネス推進連絡会の4つの企業・団体。舛添知事はヒアリングの冒頭、「2020年の東京五輪に向け、情報通信も世界一にしたい」と話し、特に訪日外国人が利用しやすい通信環境の実現と、大規模災害発生時のコミュニケーション手段の確保に向けた取り組みを、都では推進するとした。
ヒアリングで最初に登壇したNTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏は、「ネットワークは生き物」という持論を展開し、日々ネットワークを改善していることをアピール。
高品質通話サービス「VoLTE」の導入や、すでに230万ユーザーを獲得したという新料金プラン、そして大規模災害時に“薄く広く”エリアをカバーする大ゾーン基地局や、パケット網を使い音声メッセージを届ける「災害用音声お届けサービス」など、災害時に向けた取り組みを紹介した。
その上で加藤氏は、東京五輪が開催される2020年について、「トラフィックが2010年の1000倍になるかもしれない」と話し、より高速で大容量通信が可能なLTE-Advancedを導入するなど、ネットワークの高度化を図ると説明。ただし、それでも東京五輪期間中は局所的に膨大なトラフィックが発生することが予想されるため、主催者を交えて対処する必要があるとした。
さらに訪日外国人向けのWi-Fi環境については、「セキュリティを担保しながら利便性を向上させる必要がある。ロンドン五輪の時も、キャリアの提供するWi-Fiはセキュリティが高く、有料のものであったと聞いている。コスト面も考慮しながら、使い勝手のよいものを検討していく必要がある」と話し、キャリアのWi-Fi環境の無料開放には慎重な姿勢を示した。
続いて登壇したのは、ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏。ソフトバンクは現在、Sprintを買収し米国でも携帯電話事業を展開していることから、その経験を元に「すでに日本の携帯電話インフラは世界一。中でも東京は、ソフトバンクグループだけで1万6000基地局を設置しており、ぶっちぎりの状況で米国をはるかに凌いでいる」と、インフラの充実ぶりを訴えた。
その上で東京五輪については、NTTドコモと同様、データトラフィックが1000倍に増えると予想しており、「現在のままではパンクしてしまう。特に五輪会場では、スマートフォンの普及で多くの人が写真などをアップロードするトラフィックが発生する」と危惧する。
そこでロンドン五輪の事例を参考に、五輪に向け5GHz帯のWi-Fi用の周波数帯の早期拡大開放を進めるとともに、東京に“電波特区”を設け、海外でも利用されており、かつ国内での活用頻度が少ないと見られる1.7GHz帯、2.3GHz帯、3.7GHz帯の開放をするべきと説き、特区開設に向けた都の対応を促した。
またキャリアのWi-Fi網の無料開放に関しては、「利便性だけでなく、セキュリティの包括的な議論も必要。1社でできるものではない」としながらも、「電波開放をおもてなしの気持ちでやるべき」と話し、Wi-Fiネットワークを東京五輪開催中に無料で提供する方針を示した。
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