Appleは米国時間6月2日、サンフランシスコで開幕した同社年次開発者会議「Worldwide Developers Conference(WWDC)」において、強力な開発者ツール「Metal」を発表した。Appleは、今秋リリース予定の次期モバイルOS「iOS 8」において、高速なパフォーマンスとグラフィックス強化を実現し、「iPhone」「iPad」の各ハードウェアをより効率的に利用するタイトルを提供し、ゲーム事業の拡充を図る意向だ。
AppleがMetalで狙うのは、「OpenGL」と呼ばれる業界標準の3DグラフィックスAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を、ゲームソフトウェアとAppleの「A7」モバイルプロセッサの間をつなぐ自社開発のAPIに置き換えることだ。「iPhone 5s」端末、「iPad Air」、および「iPad mini」タブレット最新版に搭載されているA7は、2013年秋のリリース当時、モバイルゲームの分野にそれまでなかった64ビットアーキテクチャをもたらした。
しかし、そのせっかくの威力も、A7を活用し、パフォーマンスとグラフィックスの著しい向上をGPUから引き出す開発者プラットフォームが存在しないために、大部分が手つかずのままだ。AppleはそこをMetalで補おうとしている。
登壇したAppleのソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントCraig Federighi氏は、Metalはドローコールを現行の最大10倍に高速化し、OpenGLと比較してオーバーヘッドを大幅に減らせると述べた。開発者用語を使わずに言うと、これはすなわちゲームがAPIによって足を引っ張られず、A7の馬力をより多く活用できることを意味する。
Metalのデモを披露する際、AppleはEpic Gamesの共同創設者で最高経営責任者(CEO)のTim Sweeney氏を呼び込んだ。Epic Gamesが手がけるゲームエンジン「Unreal Engine」は、「Gears of War」から「BioShock」まで多数のゲーム機およびPC向けゲームに広く利用されており、また人気の「iOS」向けゲームシリーズ「Infinity Blade」開発者として、同社はAppleとモバイル分野で長年のパートナー関係にある。
Sweeney氏は、Metalがレンダリング効率を10倍向上させることについて、「驚異的なブレークスルー」だと述べ、Epic Gamesのスタッフがインタラクティブな「Zen Garden」アプリを使ってMetalのデモを披露した。このアプリは今秋iOS 8の登場に合わせて無料でリリースされる予定だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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