次の頒布権は、その次の譲渡権と貸与権をあわせたような権利で映画に働きますが、詳しい説明は省きましょう。
「私の作品を無断で一般に販売・配布するな」と言える権利です。たとえば、出版社が本を出版するのは、複製でもあるし譲渡でもある訳です。でもこれは、通常作者の許可をとっておこないますね。では、古本はどうか。皆さんは買ってきた本を古書店に売りに行ったり、Amazonのマーケットプレイスに出したりしますね。あれは何故できるのか。無断で公衆に譲渡してはいけないのではないか。
実は、一度正当に流通に乗った商品は、その後再配布しても譲渡権の侵害ではないという例外規定が著作権法にあるのです。これを「ファーストセール・ドクトリン」といいます。ですから、皆さんが古書店に本を売ったり、古書店がその本を売る行為は、作家の許可がなくても出来ます。では、譲渡権ってどんな場面で働くんだというと、たとえば漫画キャラクターで海賊版Tシャツを作って、ネットで売るような行為です。あれは複製権と譲渡権の侵害ですね。
これは「私の作品を無断でレンタルビジネスに使うな」と言える権利です。ですからレンタルCD店やレンタルコミック店は、著作権者の許可を取ってやっているのです。私たちが借りるレンタルCDは、少しずつですが作詞家や作曲家の取り分が払われる形になっています。レンタルCDをよく利用する方は、邦楽と洋楽ではレンタルに回ってくる時期が違うのをご存じだと思います。邦楽は発売から間もなくレンタルに回りますが、洋楽はしばらく経ってからですね。あれは洋楽についてはすぐに許可が出ないからなのです。
さて、9つめの権利まできました。この後が大ヤマ、もっとも刺激的な「翻訳・翻案権」と「二次的著作物の利用権」ですが、読者も息切れしたでしょう。続きは来週!
レビューテスト(4):音楽CDからCD-Rを焼いて、それをイベントで流しました。さて、著作権の中のどの権利に関わるでしょうか。2つ挙げてください。正解は本文に!
1991年 東京大学法学部卒。1993年 弁護士登録。米国コロンビア大学法学修士課程修了(セゾン文化財団スカラシップ)など経て、現在、骨董通り法律事務所 代表パートナー。
著書に「著作権とは何か」「著作権の世紀」(共に集英社新書)、「エンタテインメントと著作権」全4巻(編者、CRIC)、「契約の教科書」(文春新書)、「『ネットの自由』vs. 著作権」(光文社新書)ほか。
専門は著作権法・芸術文化法。クライアントには各ジャンルのクリエイター、出版社、プロダクション、音楽レーベル、劇団など多数。
国会図書館審議会・文化庁ほか委員、「本の未来基金」ほか理事、think C世話人、東京芸術大学兼任講師などを務める。Twitter: @fukuikensaku
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」