5月8日にKDDI、そして14日にNTTドコモが、夏商戦に向けた新製品発表会を開催した。KDDIは電子マネーサービス「au WALLET」でリアルでの決済に注力し、ドコモは新料金プランと高品質通話サービス「VoLTE」で音声通話の回帰を狙うが、それぞれの戦略において重要なポイントはどこにあるのだろうか。発表会の内容から確認してみよう。
なお、ソフトバンクモバイルは発表会を当面実施しないと公表している。
先に発表会を実施したのはKDDI(au)だ。5月8日に新製品・サービス発表会を開催したが、冒頭にKDDI代表取締役社長の田中孝司氏が話したのは「auは次のステージに向かわなければならない」ということだった。そこでauは「あらゆる分野で期待を超える価値を提供し、磨き上げていく」(田中氏)とし、端末、ネットワーク、サービスなどの総合力を高めることで、競争力を強化する姿勢を見せている。
中でも今回、auが最も多くの時間を割いて説明した“目玉”が「au WALLET」だ。これは、auスマートフォンに割り当てられている「au ID」に紐付いた、プリペイド式の電子マネーカードを使って、リアル店舗での決済ができるサービス。カードにはスマートフォンから直接料金をチャージできる上、MasterCardの加盟店であれば国内外問わず決済が可能だ。
さらにau WALLETには独自のポイントプログラムが用意されており、カードを使った買い物だけでなく、毎月の通信料からもポイントが加算される仕組みとなっている。貯まったポイントはau WALLETでの買い物に利用できることから、複数のポイントカードを持つ必要がなく、ポイントを1枚のカードに集約できるのが大きなメリットとなるようだ。
au WALLETの提供による、auの狙いは明確だ。スマートフォンとリアルの決済――日常生活に欠かすことのできないこの2つの要素を結び付けて利便性を高め、さらに「auスマートパス」によるお得情報を結び付けることで、auのスマートフォンでしか得られない価値を高め、auの継続利用につなげるのが大きな目的であることに間違いないだろう。
またau WALLETの戦略からは、自社、そして日本固有となるマイナーな要素を排してグローバル性の高いものを取り入れることで、かかるコストを下げながらすばやく付加価値を高めたいという、auの狙いも見えてくる。
au WALLETにおサイフケータイではなくMasterCardの基盤を使い、スマートフォンとは別にプラスチックのカードを持たせる仕組みとしたのも、すでに世界的に存在する基盤を活用し、短期間で大規模に展開する狙いが大きかったといえよう。それゆえFeliCaの対応には消極的だが、MasterCardが積極的に取り組むNFCへの対応には前向きな様子も見せており、実際au WALLETのカードにはNFCも搭載されている。
auのそうした姿勢は、最近のKDDIの戦略からも見て取ることができる。急速なLTEネットワークの全国整備はCDMA2000からの脱却が狙いであるし、“ファブレット”の採用など大画面スマートフォンの拡大は、グローバルでのハイエンドモデルのトレンドに合わせたものだ。ただし、拙速過ぎるグローバル化は歩調を崩し、嗜好の違いや使い勝手の悪さから、顧客離れにつながる可能性もある。国内ユーザーとの慎重なバランスが求められるところだ。
ちなみに今回、さまざまな新サービスや端末を発表したauだが、料金施策に関しては唯一発表していない。田中氏は「料金はVoLTEで攻められるが、今日は発表しない」と話しており、先行して料金プランを発表したドコモの様子を見た上で、VoLTEの導入に合わせて発表する可能性が高いと見られる。しかし、その分提供が後にずれこむだけに、いかにドコモと差別化し、かつユーザーメリットを打ち出せるかがポイントになりそうだ。
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