全く異なる戦略を打ち出すauとドコモだが、双方の発表会からは共通した要素も見えてくる。それは、従来各社がアピールしていた端末やネットワークではなく、サービスを新戦略の目玉に据えていたことだ。
これは裏を返せば、端末やネットワークではすでに差異を打ち出しにくくなってきていることの表れともいえるだろう。両キャリアのスマートフォン端末戦略を見ると、auは5インチ以上の大画面とバッテリを重視。またドコモはVoLTEへの対応に加え、バッテリの急速充電に対応したことなどを前面に打ち出している。だが新機能の搭載を除けば、端末に目新しいコンセプトを見られない。
無論、auの新たなタフネススマートフォン「TORQUE」や、デザイナーに原研哉氏を起用し、デザイン性を大きく高めたドコモの「らくらくスマートフォン3」など、個性ある端末を開拓する取り組みが失われている訳ではない。だがそれでも、スマートフォンの進化が停滞し差別化に苦しんでいる印象をぬぐうことはできない。
ネットワークに関しても同様だ。auはキャリアアグリゲーション、そしてWiMAX 2+を導入するなど意欲的な取り組みを見せている。しかし、通信速度の最大値が大きくなる訳ではないため、3GからLTEに進化した時のようなインパクトには欠けることから、積極的な買い替えを促すには至らない印象を受ける。
スマートフォンの端末やネットワークに閉塞感が出てきた一方で、盛り上がりを見せていたのが、スマートフォンの周辺機器だ。その傾向を象徴しているのが、ドコモが新たにケースやウェアラブルデバイスなどスマートフォン周辺機器を扱うブランド「docomo select」を立ち上げたことだ。また、auの周辺機器ブランド「au +1 collection」においても、Bluetoothでスマートフォンと接続してゴルフスイングをチェックするセンサや魚群探知機など、従来にはないユニークな商品が登場している。
また今回の発表会において、ある意味スマートフォン以上に注目を集めていたのが、ドコモの「TV BOX」である。これはテレビチューナとWi-Fiルータがセットになった機器で、テレビやiPhoneなどと接続してワンセグやフルセグ、さらにはNOTTVが視聴できるというもの。Androidデバイスとしても活用できるので、「dビデオ」などのストリーミングサービスも利用できるほか、SIMカードを挿入すればWi-Fiルータとしても活用できるなど、非常にユニークな機能を備えていることから、多くの記者の注目を集めていた。
キャリアがサービスを戦略の目玉に据え、スマートフォンより周辺機器が盛り上がる。そうした傾向は、各社が重点を置くポイントが、スマートフォンのデバイス自体から、その周辺のサービスへと移っていることを示している。それだけに今後は、いかに料金競争に巻き込まれずに、スマートフォンの周辺で付加価値を高められるかが、キャリアの成否を大きく分ける鍵になるといえそうだ。
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