その新料金プランを打ち出して注目を集めたドコモは、5月14日に夏商戦に向けた新製品やサービスの発表会を開催。こちらも料金のほか、デバイス、サービス、そしてネットワークの4つを柱に総合力を高める方針のようだが、今回最も注力されていたのが「VoLTE」だ。
VoLTEとは、LTEのネットワーク上で、IP電話の仕組みを用いて音声通話を実現する仕組みのこと。最大の特徴は従来の3Gの通話よりも周波数帯域が広く、音質がよくなることだ。特に高音域の女性の声は、一層クリアに聞こえるようになる。
他にもVoLTEの導入メリットはいくつかある。発着信のスピードが3Gより早くなるほか、音声通話中もLTEでのデータ通信が可能となるため、地図やウェブサイトの閲覧・検索にかかる時間が従来より大幅に短縮できる。またビデオコール、いわゆるテレビ電話も、LTEのネットワークを用いるため、3Gの時と比べ非常に綺麗な映像で楽しむことが可能だ。
VoLTE、そして定額通話を実現する新料金プラン「カケホーダイ」によって、ドコモは音声通話の価値を再び高めたい狙いがあるようだ。IP電話による通話は、今やLINEをはじめとしたスマートフォンアプリで簡単に実現できるものだ。しかし、VoLTEはキャリアがQoS(Quality of Service)を確保しているため、他のIP電話サービスよりも安定した高品質の通話が利用できる。
NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏は、発表会の最後に「最高のコミュニケーションを皆様へ」と書かれた巻物を取り出してVoLTEをアピールしていた。VoLTEによる音声通話のメリットを積極的に訴求する背景には、音声通話の需要を高めることで、“通話していない人には値上げにつながる”という声も多く上がった、カケホーダイの価値を値段相応に高めていきたいという狙いもありそうだ。
もっとも、高品質の通話やビデオコールなどは、双方がVoLTEに対応していないと対応できないため、VoLTEのメリットを最大限に享受するには端末自体の普及が必須となってくる。提供開始後は、そうした課題をいかに短時間でクリアできるかに注目が集まるだろう。
この他にも、定額で雑誌が読み放題になる「dマガジン」などさまざまな新サービスを発表したドコモだが、そうした発表内容よりも高い関心を集めているのが、同社の発表会の前日となる5月13日に、NTT東西がFTTH回線の卸売を開始すると発表したことだ。これが実現すれば、ドコモをはじめとしたFTTH回線の設備を持たない携帯電話事業者が、「auスマートバリュー」に対抗できる、固定回線と携帯電話回線の“セット割”を実現できる可能性が大いに高まる。
この件について加藤氏は、「これから検討していくが、ユーザーから見れば固定とモバイルといった違いを意識せず生活上に存在する状況。光を含めたICT環境を提供すれば顧客は喜ぶのではないか」と話しており、前向きに取り組む姿勢を見せている。ドコモとNTT東西のセット割には根強い反対の声があるが、これが実現できればドコモはシェア挽回の大きな起爆剤となる。それだけに、料金プランに関する争いがひと段落した後は、セット割による争いが業界全体の争点になる可能性が高そうだ。
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