モバイルで様変わり?--中国の新鋭ネットベンチャーが会した「GMIC 北京」

 史上最大規模かとの予想もあるAlibabaのIPOが話題だが、中国経済の成長とともにハイテク業界における中国企業の存在感が大きくなっている。かつて中国のインターネットベンチャーといえば“中国のGoogle”ことBaiduやAlibabaだったが、中国でもスマートフォンやタブレットとクラウドによるモバイルの時代が本格化しており、ベンチャーの顔ぶれも変わってきている。5月初め、中国・北京で開催された「Global Mobile Internet Conference(GMIC)2014」では、勢いのあるベンチャーが登場し、自分たちのビジョンを語った。

人気沸騰中の「WeChat」、ビデオ通話もできるメッセージングアプリ

 LINE、KakaoTalkなど、モバイルメッセージングは“時の人”ならぬ“時のアプリ”だ。FacebookがWhatsAppを落とすのに190億ドル費やすことからも、世界的にメッセージング市場がアツいことがうかがえる。

  • 「WeChat」の開発元 TenCentのCOO、Mark Ren氏

 中国には、グローバル市場で人気のサービスの多くに国産版がある。モバイルメッセージングでは「WeChat」だ。開発元はTenCent、ポータルでスタートしたネット企業で、ゲーム、IMの「QQ」の開発でも知られる。ユーザー数なんと10億人というTenCentはどんな企業なのか?

 TenCentのCOOであるMark Ren氏は自分たちを「つながりの会社」と表現する。インターネット上での人と人の間のコミュニケーションサービスは、「これまでには実現しえなかったつながりを作ったし、効率性にも寄与した」とRen氏。WeChatはメッセージングとソーシャルサービスの良いところを組み合わせたアプリで、早期から動画通話機能を実装するなど他のメッセージングとは一線を画す。国際展開もしており、留学や仕事で国外にいる人が中国にいる家族や友達とやりとりするなど、中国と中国外で動画通話をするためにダウンロードしているというパターンもよく聞く。なお、アクティブユーザー数はすでに3億5000万人を超えている(ちなみに、Lineは4億人、WhatsAppは5億人)。

 TenCentは当初、「ライフスタイルをワンストップで提供する」を目指していたというが、ここ数年は「つながりの創出が自分たちのフォーカスだ」とRen氏は説明する。その戦略の下、TenCentが目指すのはオープンなプラットフォームだ。その上でエコシステムを構築していくのがビジネスモデルという。Ren氏は「つながりを事業とするサービスは、つながりの品質と数によって価値が決定する」、「われわれの目標は新しいつながりの創出を可能にするプラットフォームになることだ」と続ける。

 WeChatの大ヒットの後、同社が現在進めているのは、ネット上だけのつながりからオフラインへの拡大だ。オンラインからオフラインへ、そのようなサービスに着目しているという。例として、同社が出資しているタクシー予約サービス「Didi Dache」、ローカル情報や口コミサービス「Dianping」の2つを取り上げた。「オンラインとオフラインでつながりを仲介するサービス」とし、このようなサービスが次のインターネットのトレンドになると見解を示す。「(オンライン上のつながりだった)つながりを、将来に向けて再定義する必要がある」とRen氏。

 全ての既存産業が何らかの形でインターネットと融合すると言われているが、TenCentの戦略は既存産業をつなぐことではない。Didi DacheやDianpingなどの分野ごとに特化したサービスが登場し、「これらをつなげていくこと」とRen氏は説明する。既存産業がオンラインと融合する際に専門知識やノウハウが必要になるが、ここはTenCentの領域ではないという考えからだ。「TenCentになにができるのか? オフラインのショップとつながったり、(Didi Dacheのような)新しいベンチャーを結びつけることだ。そのためのインターフェイスとプラットフォームを提供する」と述べた。

“中国のTwitter”「Weibo」は情報への窓口を目指す

 そのWeChatに圧され、かつての勢いがなくなったといわれるのが「Weibo」だ。“中国のTwitter”といわれるマイクロブログサービスで、Sina.comが運営する。4月にはNASDAQでIPOも実現した。

  • Sina WeiboのCEO、Wang Gaofei氏

 Sina WeiboのCEOとしてWaiboを率いるWang Gaofei氏はGMICで、低調にスタートしその後株価が跳ね上がったIPOについて「中国の投資家はわれわれのビジネス、われわれのバリューを理解している」「ファンの投資が株価を上げた」と振り返る。一方で、「われわれは評価額だけを気にしているのではない」とも語った。

 WeChatとの競合について聞かれると、「Weiboは公開された情報の中からユーザーが興味のある情報にアクセスできる情報ソース」と述べ、コミュニケーションが中心のWeChatとの違いを強調した。中国では今年に入りLinkedInが参入するなど、人口13億の市場を巡ってソーシャル分野での競合が激化している。Wang氏は「市場はオープンだ」と述べ、今後中国市場はさらに多様化していくとの予想を示した。「Facebook、Twitter、Tumblr、Snapchat……、国外にはさまざまなサービスがある。どれもユーザーの特定のニーズを解決するに過ぎない。Weiboは全ユーザーのニーズを満たせないし、Weiboだけですべての問題が解決するというユーザーもいない。今後も競合は増えるだろう」(Wang氏)。

 そんな中でWeiboの戦略については、「米国ではTwitterがテキスト、Instagramが写真、YouTubeが動画だが、Weiboはテキスト、写真、動画をすべて持つ。今後も自分たちの戦略の下に競争力を付けていく」とした。

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