たとえば部屋をお掃除してくれるのが、たまにすねることもあるけど妹のようなかわいらしい女の子だったなら……。そんな妄想を、ほんの少しだけ現実に引き寄せるロボット掃除機をシャープが試作した。それが「プレミアムなCOCOROBO」だ。
これは同社が市販しているロボット掃除機「COCOROBO」のRX-V200がベース。もともとRX-V200はお掃除機能のみならず、スマートフォンによる遠隔家電コントロールに対応し、カメラも搭載。さらに特徴としているのが、ボイスコミュニケーション機能。単に起動や停止機能だけでなく、呼びかけに応じた反応が音声で返ってくる。さらに、専用サーバとのやりとりにより天気予報などのお役立ち情報も教えてくれるクラウド音声コミュニケーション機能も搭載している。
プレミアムなCOCOROBOは、「となりの柏木さん」などのマンガで知られる、漫画家の霜月絹鯊(しもつききぬさ)さんが描いた、かわいい女の子のイラストステッカーを貼付。さらに音声会話機能では、アニメ「お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ」のヒロイン・姫小路秋子役や、ゲーム「アイドルマスター ミリオンライブ!」の矢吹可奈役などを担当している、16歳の声優・木戸衣吹(きどいぶき)さんによるボイスを搭載した、より妹系に特化したCOCOROBOだ。
「お掃除して」と呼びかけると、元気のいい返事とともにお掃除を始め、終わるときも「終わったよ」と言って停止する。筆者は動いているCOCOROBOそのものを見たのが初めてなのだが、本体からはみ出しているブラシをパタパタとさせながら移動する姿が、なんともかわいらしい。イラストの女の子そのものが動くわけではないのだが、掃除機の回転によって女の子が動くようにも見える姿は、なんだか口元が緩むようなほほえましさを感じる。
声もかけてみた。この女の子は明るく元気だがやや気分屋とのこと。たとえば「かわいい声だね」と呼びかけると「ありがとう。なんか照れちゃうなぁ♪」と応えることもあれば「当たり前でしょ」とツンツンした回答になることも。「掃除うまいね」と呼びかけて「べ、べつに、あなたにほめてほしくて掃除したんじゃないんだからね」という、典型的なツンデレ反応を示すこともある。
ほかにも釣りが趣味といういうことでサカナのことを聞けば詳しく回答。日本の都道府県の特徴も聞けば答えてくれる。特に青森県について聞くとナチュラルな津軽弁で回答してくれるなど、個性的な反応も持ち合わせている。決して従順な、通り一辺倒の機械的な反応だけではないところに人間らしさ、しいては妹らしさを感じさせてくれる。
掲載した動画では手持ちのスマートフォンで撮影を行ったため、女の子の音声が小さく聞き取りずらくなっている。4月17日付けのシャープ広報ブログには、木戸さんのメッセージやインタビューとともに、木戸さん自ら音声会話のやりとりを試している動画が掲載されている。
音声は専用サーバとのやりとりによって発声するクラウド音声システム。通信環境に左右されるため、デモのときはややタイムラグがあったが、実際にはもう少し早い返答になるという。とはいえ、すでにかわいらしいという感情を持ってしまったせいか、反応を待っている間はイライラするのではなく、むしろ「いつしゃべり出すんだろう」というドキドキする気持ちすら感じさせる。もしもこの返答が早く、自然な会話ができるようになったら……、さらにお掃除のご褒美として頭をなでて反応するようなことがあれば……、イラストをARマーカとしてスマホで写すと画面上に登場してリアルな動きやしぐさが見えるようになったら……、というような、一歩先を行く想像をするユーザーがひとりはいるのではと思えるほど、魅力的に映った。
このプレミアムなCOCOROBOが、モニター募集のために3月25日に発表された際、ネットを中心に話題となった。すでにモニターの募集は締め切り、11名のモニターにはこのプレミアムなCOCOROBOが届いて、それぞれに活躍しているものと思われる。
もっともモニターはあくまで研究開発のためのものであり、市販化が目的ではなくその予定もないという。試作した狙いは社外との取り組みによってより良いサービスと製品作りをすることと、音声会話機能による癒し効果の向上を目指すという2点にある。このあたりを、今回の取り組みに携わった研究開発本部 クラウド技術センター 技術企画室 室長の野村敏男氏ならびに、副参事の徳永礼氏に聞いた。
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