Wearable Tech Expo

ウェアラブル技術が身体能力を大きく進化させる--スポーツ界の変革 - (page 3)

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ヒーロー出現で障害者を見る目が変わる

  • 遠藤謙氏

 次に湯川氏は、技術だけでなくコストの問題がどうなるかを尋ねた。遠藤氏は「包括的にいえば、貧困や経済状況、宗教など、さまざまな問題がある。パラリンピックで健常者よりも足が速い“ヒーロー”が出現すれば、障害者を見る社会の目も変わってくるだろう。一方、義足があれば可能になることは圧倒的に増えるが、先進国で使用されている義足はとても高価だ。5年間壊れず丈夫だが、価格が数十万、数百万円したのでは途上国にそぐわない。途上国に経済状況に適し、そこに住む人々の生活を支えられるような義足が求められている。そのため、インドで現地の人々と一緒に義足をつくっている。現地での製造はスキル面で足りない部分もあるが、現地で生産することにより、その技術が根付く」と話す。

 では「遠藤氏や為末氏の取り組みは、ビジネスにつながるのか」と湯川氏は問いかけた。遠藤氏は「義足単体では難しいが、リハビリや高齢化社会にも対応できたり、子供にも利用できたりする包括的な技術を確立すれば、ビジネスになっていく可能性はある」と語った。

 為末氏は「結局、人は動き出さざるをえないのではないか。メタボリックシンドロームとして30~40代は、肥満や高血圧に注意しようといわれたが最近では、ロコモーティブシンドロームという発想が出てきた。これは身体を動かさないと骨、関節、筋肉などに障害が起こり、自分で動くことができる能力が低下し、介護が必要になる危険度が高くなる諸症状のことだ。歩くことが健康を維持し身体の支えになるが、高齢化社会が進むにつれ、歩行困難な人々の増加が予想される。電動ではなく自分で動くための手段が必要になる。それがビジネスになるかはともかく、動くための技術をできるだけ多く残しておくことは、未来の日本にとって非常に重要になる」と述べた。

技術で心のバリアフリーを目指そう

 湯川氏は「ウェアラブルコンピュータといっても、日本なりの技術の進め方があるべき。米国シリコンバレーと同様のことをしても勝てない。技術が劣っているとは思わないが、シリコンバレーには技術者だけでなく、マーケターやビジネスを構成するエコシステムがあり、そこには求心力がある。日本ではこの国ならではのテクノロジの特色が必要だ。それが何になるのかは未知数だが、今後日本は大変な高齢化社会になるとともに、人口が減少していく。そこで起きる問題はテクノロジで解決するべきだし、そういうものが中核になれば、テクノロジセンターが形成される」と語り、ウェアラブルコンピュータの領域に日本独自の発想が必要だと強調した。

 遠藤氏は「高齢化社会の日本で、課題に対処していくための1つの策は、みんながサイボーグ化すること。そういう技術を開発していきたい。2020年の東京パラリンピックが、1つのきっかけになれば良いと考えており、日本人が金メダルを取れるような義足を開発していこうと思っている」と述べた。

  • 湯川鶴章氏

 最後に為末氏は「ウェアラブルコンピュータはいまのところ、視覚、聴覚に関わる機器が主流だが、いずれ人体に入っていくだろう。人体とコンピュータがどう融合するかが、大きな流れになるのでは。最終的には頭というよりは身体。身体の感覚が大事になる。動くことで人は自分を確かめている。ウェアラブルコンピュータは仮想空間に向かいそうだが、結局自分の身体は自分だと再認識し、そこから拡張していけばいい」として、この領域でも身体性が重要だと強調した。

 遠藤氏は「我々が考えている以上に多くの障害者がいるはずだ。彼らが町に出てこられないのは、バリアフリーでないという理由がある一方、出てこないからバリアフリーが進まない面もある。このハードルを超えるためにまず必要なのは、心のバリアフリー。義足をつけている人をみて、びっくりしてしまう感覚はまだある。

 日本ではメガネをかけている人の比率が高い。メガネも数十年前であれば障害者になっていたかもしれない。しかしメガネにより、普通に生活ができるようになったという見方もできる。最近ではメガネもファッションの1つになり、心のバリアフリーが実現している。最高のウェアラブルデバイスとは、身体能力をサポートできるものであり、圧倒的な技術力で、利便性とパフォーマンスを高めるものだが、さらにかっこいい、かわいいデザインを付加していくことも重要になる」と語り、心のバリアフリーの実現を目指す意欲を示した。

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