すでにスポーツのさまざまな場面でITは駆使されているが、さらに進化するとどうなるか。為末氏は「バレーボールでは、上方で見ているエンジニアがコンピュータに、アタックはどこに打ってどのくらい決まったかなどさまざまな数値を入力し、監督のタブレットに送信している。監督は、それらのようなデータを参照しながら、作戦を立てる。そんな状況が進むと、エンジニアの力が勝敗の帰趨を左右するかもしれない。
2020年の東京五輪では何人くらいのエンジニアを競技場に入れるかを規制されるのではないだろうか。またアメリカンフットボールでは、ウェアラブルのセンサを用いることで、選手の心拍数や移動距離を指導者側がすべて把握できる。この選手は相当バテている、といった選手個人の状況がわかる。箱根駅伝などでもウェアラブル端末で発汗量や体温、心拍数などを計測し、リアルタイムで監視すれば、脱水症状を抑えられる」と語る。
技術がスポーツを大きく変革するのは、五輪の世界だけではない。「今後はカメラ機能により、選手が自分の背中の筋肉の状態を見ながら走ることも可能になる。同時進行で上下左右の4方向から走る姿を見ることもできる。トップアスリートといわれる層はそれほど変わらないかもしれないが、このような技術の進化により、アマチュアのレベルは大きく向上するだろう」と為末氏は指摘。湯川氏も「人の能力はインターネットを活用することで向上してきた。それは知能の分野だったが、それと同様に技術により身体能力も向上することになる」と述べた。
今後ロボット義足の技術革新がさらに進めば、その能力は健常者を凌ぐだろうと遠藤氏は予測し、「2020年のパラリンピックでは、義足を用いた選手の走り幅跳びの記録は、おそらく五輪選手の記録を超えることになる」と話す。為末氏は「走り幅跳びでは9m、100m走では9秒が現在の壁だが、20年後には両者ともにパラリンピックでこれらを超えることになるだろう」と述べた。
湯川氏が「今後パラリンピックの方が、高い関心を集めるようになるかも」と話すと、遠藤氏は「僕はすでにパラリンピックの方がおもしろいと思っている」と応じた。為末氏は別の視点から「たとえば、F1レースで活用された技術が一般自動車に応用され、産業の発展に貢献してきた。パラリンピックも同じようにここで用いられたものが、技術や福祉産業をさらに引き上げられるのではないか」と語り、パラリンピックの役割が社会的にも重要な意味を持ってくる可能性を指摘した
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