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アジア初のビットコイン自販機「TEMBUSU」--創業者が語るビットコイン事情とは

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 この連載では、シンガポール在住のライターが東南アジア域内で注目を集めるスタートアップ企業を現地で取材。企業の姿を通して、東南アジアにおけるIT市場の今を伝える。

 取引所「Mt.Gox」の経営破綻により、仮想通貨「ビットコイン」の存在は広く知られることとなった。欠陥はMt.Goxの仕組みにあったのか、それともビットコインというコンセプトや枠組みにあったのか。日本国内では議論が現在進行形で行われているが、海外ではビットコインについてどのような動きがあるのだろうか。

紙幣投入から1分でビットコインに交換

 2月、シンガポールのボートキーにアジアで初となるビットコインの自動販売機「TEMBUSU」が登場した。手がけたのは、たった3人で運営されるスタートアップ企業。ちなみにTEMBUSUという名前は、東南アジアで見られる木の名前に由来しており、その木はシンガポールの5ドル紙幣にも描かれている。

  • 自動販売機「TEMBUSU」と製造するTembusu Terminals共同創業者のJarrod Luo氏

 TEMBUSUの利用方法は、まず自販機に紙幣を投入する。すると自販機のディスプレイに1ビットコインあたりの価値が表示され、QRコードが印字された紙が出力される。そのQRコードをウェブのウォレットで読み込むか、その紙をビットコインによる決済が可能な店頭に持参することで購買可能だ。

 利用者にとってビットコインを利用するメリットは、クレジットカードなどと比較して決済手数料が安いことだ。また、現金を持たなくてよいキャッシュレスの手軽さもある。懸念されるセキュリティへの対策やその他の課題については後述する。

 自販機を製造するTembusu Terminalsのビジネスモデルは、設置するオーナーに自販機を販売し、その代金を得るというもの。自販機は1台6000シンガポールドル(海外顧客の場合は6000USドル)。さらに投入された金額の5%を手数料としてオーナーと分配。そのお金は保守運用費などに充てられるという。

 自販機を購入するオーナーにとってのメリットは、先述の手数料による収入。また店舗などの場合、利用者はビットコインを使うことで低い手数料で購買できるため、集客を促進する効果もあるという。

ウェブ取引所に対する優位性は?

 共同創業者の一人で広報担当のJarrod Luo氏は、ウェブの取引所に対する自販機の優位性について次のように語る。まず1つは、ビットコイン受け取りまでの時間短縮。同氏によれば取引所の場合、個人認証の手続きなどにより、約10日間を要するという。自販機の場合はそれが約1分で完了する。

 このことは利用者の安心にもつながるという。同氏によれば取引所の場合、受け取りまでの期間、デポジットのお金を一時預けることになるそうだ。その間に万が一取引所に問題が発生した場合、預けたお金が戻ってこないリスクを負ってしまう。

  • 自販機から出力された紙。このQRコードを読み込むことでビットコインを利用できる

 また自販機の場合、お金が目の前にあるフィジカルな機械の中に入っていることも、利用者にとっては安心材料になると話す。自販機に投入されたお金は、設置する店舗への手数料を除いて一旦Tembusu Terminalsの銀行口座に入れられる。そのお金で同社はさらにビットコインを購入し、価値を流通させる。

 Luo氏曰く、シンガポールには自販機を扱う会社が3社あるが、TEMBUSUの他社との差別化は紙幣を保管する容量の大きさとホワイトハッカーによる厳重なセキュリティ対策。また顧客からの要望があれば、自販機にカメラを設置し利用者の顔や様子を映像で残しておくことができることだそうだ。

 同社の自販機の設置店舗は2店舗で、これまでの利用者は約1000人。3月には30万シンガポールドル(およそ2400万円)の資金を調達した。今後は人材採用によって組織を拡充し、シンガポールを中心に米国、オーストラリア、ロンドン、パリなど世界各国に拡販していくという。

ビットコイン浸透に立ちはだかる課題は?

 直近、シンガポールで自販機を拡販していく上で克服すべき市場の課題について、共同創業者のAndras Kristof氏は「ビットコインを簡単に“受け取る”ことができ、また“使える”ようにすること」だと話す。

 同社はこれまで自販機を多く設置し、利用者がビットコインを受け取る環境を作ることに注力してきた。今後はそれと同時に、店舗など使える場所を増やし、価値が流通する市場を作っていかなければならないと話す。Jarrod氏によれば、現在シンガポール国内でビットコインを使える店舗・施設は約40店舗。飲食店やヘアサロンなどが中心だそうだ。

  • 自販機が設置されるシェアオフィスではドリンクや軽食をビットコインで購入できる

 さらにもう一つの課題は、利用者が自販機から出力されたQRコードを読み込み、ビットコインを管理するためのウォレットアプリを、アップルがApp Storeで禁止していることだ。Google Playではアプリが公開されているため、Android OS搭載の端末利用者は問題なく使える。ちなみにアップルは禁止している理由を明らかにしていないそうだ。

 Mt.Goxの経営破綻が同国のビットコイン市場に与えた影響についてJarrod氏は「あの一件で利用者が良いプレイヤーとそうでないプレイヤーをきちんと見極めるようになったことは業界にとっていいことだ」と話す。一方でシンガポールの銀行は、ビットコインがマネーロンダリング(資金洗浄)などに利用されるリスクを孕むことから扱いには慎重な姿勢だという。

 また、シンガポールの内国歳入庁は先日、企業がビットコインを通じて行う購買取引に対して課税する方針を表明した。これについてAndras氏は、政府のような権威が市場に介入することによってビットコインに対する信頼感が醸成されることは、さらなるプレイヤーの参入を促し市場の活性につながるだろうと受け止めている。

 シンガポールの新聞 ストレーツ・タイムズによると、ビットコインを現金化して引き出せるATMも同国に登場したという。専用機を設置したのは、ビットコインブローカーのコイン・リパブリックで、現金に替える専用機の設置は同国初となる。

 しかし、以上を踏まえると、シンガポールにおけるビットコイン浸透の先行きは依然として不透明と言わざるを得ない。安価な手数料や手数料収入というメリットと、ビットコインそのものやプレイヤーに対する信頼、政府による規制などのバランスが今後どう傾くのかにかかっている。

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